パズル小説 快答ルパンの冒険(予告編)

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【日本初・パズル小説】について

□パズル小説は、廣川が開発した謎解きクロス®というパズルを使った小説で、本稿『快答ルパンの冒険』は、篁会同窓会サイトのため、特別に書き下ろしたものです。全体のタッチは江戸川乱歩調ですが、パズル小説は子どもから大人まで、個人でもカップルでも家族でも安心して楽しめるようエロ・グロ禁止となっています。

□快答ルパンは、廣川が書くパズル小説の舞台として設定された探偵@ホームズ事務所のライバル。探偵@ホームズと知恵比べをする快答ルパンは、いつも難しい問題を何題か提示します。そして、たいてい五人の容疑者も提示され、犯人を誤認逮捕しないように調査し、その解答から一番心地いい「快答」をした人を、真犯人とする内容となっています。

□快答ルパンの冒険は、原則として毎月1回、気が向いたときにアップする予定で考えています。ちなみに、その問題は謎解きクロス®9×9を使った本格的なパズル小説となります。本稿は、謎解きクロス®7×7を使った簡易版のパズル小説で、これから始まる楽しい謎解きストーリーの予告編となっています。

 

■予告編

※以下のパズル小説は、竹早高校同窓会のサイトで2019年8月から毎月連載される予定の原稿を、広く一般読者にも開放し、併せてアーカイブとして保存することを目的に掲載いたします。

※今回は、予告編で、謎解きクロス7×7のバージョンです。

ある晴れた日の朝。

「大変です! 池野所長、起きて!」

と叫んだのは、アルバイトで探偵の助手をしている、大学生の東島君。

そこは東京・渋谷にある雑居ビルの一室。玄関に『探偵@ホームズ』という看板のある小さな事務所である。

もっとも探偵といっても、その事務所では殺人などの凶悪事件や夫婦ゲンカなどのややこしい事件を調べることはしない。

彼らの専門は、地域の文化や歴史、魅力が失われたという謎を解明することで、のない話が大半だ。心のをえぐることもないので、痛みもなかった。

「篁会の大森さんから、電話が!」

池野所長は、大きく伸びをして聞いた。

「どうしたの? まるで快答ルパンでも表れたような顔して」

「え? どうしてわかったのですか」

「それは、東島君。ミステリーウォークで使うパズル小説の出だしは『大変です!』で始まり、快答ルパンが難題を出すものと決まっているからさ」

「あ、恐れ入りました。今回も、あの快答ルパンが、凄いものを盗んだようで」

東島君の言葉を、池野所長は真顔で制した。

「それから先は、私が推理してみせよう。快答ルパンは、国民的テレビドラマの人気を盗んだに違いない。そこで困った大森さんが、後輩の東島君に相談してきた」

「さすが所長。よく、そこまで推理できますね」

池野所長は、東島君から手渡された珈琲を飲みながら、満面の笑みで応えた。

「それはね……大森さんが、とてもステキなレディだからさ。もう少し私が若かったら、きっとがけのにおちていたな。あぶないところだった……」

「所長、それって理由にならないような……」

実は、事務所で受けたメールは誰のメルアドでも、一度事務所の通信サーバーに入り、それから個々に配信されるシステムになっている。

すなわち池野所長は、スタッフならプライベートメールでも、事務所内に来たものであれば読みたい時にチェックできた。

それで東島君が「大変だ!」と叫ぶ少し前に薄目をあけ、スマホに転送されてきた東島君あてのメールを読んでいたのである。

「そんなことより、詳しい状況を報せてほしい」

実は、軽い老眼の池野所長は、細かい文字を読むのが苦手で、だいたいのことがわかったら細かいところは読まなかった。

「快答ルパンなら、相手に不足はない。今度こそ、快答ルパンの一味を、ひとあみ大臣にしてみせよう」

「ひとあみ大臣? 何ですか、それ」

「え? 知らないのか。をパッと投げて、魚を群れごとつかまえることだ」

「それって……一網打尽のことですか?」

「ん? そうともいう」

東島君が、大森さんからの依頼内容をまとめると、以下のようになる。

仕事でテレビ局に出入りしている大森さんは、竹早高校の先輩にあたる別次プロデューサーに呼び出された。

日ごろから

『いい仕事があったら紹介してね』

とお願いしていたので、その話と思ったが、渋谷にある国民的テレビ局食堂の片隅で、ヘルシーな大豆のサラダを食べながら聞いた話は、とても深刻なものであった。

快答ルパンは、篁会の発展にとって大問題となる、あるモノを盗んだという。

ちなみに彼は、あの怪人二十面相のように、誰かに成りすます名人だ。彼の変装は、本物と区別がつかない。どんな地位の人でも、そっくりに真似ることができた。

今回、彼が成りすましたと思われる人物は、以下の五人に集約された。どうしても、それぞれの人物に会い、知恵比べをして、真相をあぶりだす必要があった。

【容疑者】

□吉岡新鮮さん……新鮮な記事を書くジャーナリスト

□篠辺修業さん……天気予報を伝える人気キャスター

□高倉孝匠さん……甲子園を目指す野球チームの監督

□中村光臨さん……清里の野菜で作る和食料理の達人

□薩田美子さん……イタリア直輸入の雑貨店オーナー

 

池野所長に頼まれた東島君は、探偵@ホームズ事務所を出て、工事中の建物が林立する渋谷駅周辺の聞き込みに向かった。

 

渋谷ヒカリエの喫茶コーナーには、新鮮な記事を書くことで知られているジャーナリストの吉岡さんがいた。

「吉岡さん、こんにちは」

「おう、探偵@ホームズ事務所の東島くん」

「ごぶさたしています。吉岡さん……本物ですよね」

「え? なに言ってんだか。どうした? 失恋か」

「それは、違います。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「知らないけど、小枝などのスナック菓子もいいけど寒天を使った和菓子もいいよ」

 

渋谷ストリームの川沿いには、天気の予報を伝える人気キャスターの篠辺さんがいた。

「篠辺さん、こんにちは」

「おう、東島くん」

「篠辺さん……快答ルパンの手先じゃないですよね」

「え、どうした? 腹へっているのか」

「それも、違います。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「知らないけれど、飲みにいこうか。今宵の食事は海老天にしよう」

 

渋谷区立の植物園には、甲子園を目指す野球チームの監督である高倉さんがいた。

「高倉さん、こんにちは」

「おう、未完の大器と呼ばれる東島くんじゃないか」

「高倉さん……スマホで何を観ているのですか」

「体操のビデオだよ。どうした? 元気ないな」

「それは、大丈夫。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「知らないけれど、この選手はバク転で三回転。ハンパないだろう」

 

新しくなった渋谷区役所のロビーでは、清里の野菜で作る和食料理の達人である中村さんが涼んでいた。

「中村さん、こんにちは」

「東島くんじゃないか。珍しいね」

「中村さん……視聴率のこと、ご存知ですよね」

「ぼくだって竹早卒業生、そのくらい知っているさ」

「なら、教えてください。快答ルパンが盗んだものに心当たりはありませんか?」

「どうかな。それより、いだてん、いいドラマだよ。東島君も、このドラマを観れば人間のクズにならなくて済む」

 

最後に駅前のスクランブル交差点に行くと、パワースポットである金王八幡宮で巫女の職も兼務しているイタリア直輸入の雑貨店オーナーの薩田さんがいた。

「薩田さん、こんにちは」

「あら、東島くん。元気?」

「薩田さん……まさか、手先じゃないでしょうね」

「そんな、バルサミコでも舐めたようなこといわないで」

「失礼しました。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「図書館に行って、頭を冷やして図鑑で調べたらいいわ。ほら頭寒足熱……どうしたの、東島君。目が点になっている」

 

容疑者の全員と会った東島君は、池野所長に連絡を入れた。

『五人の調査が終わりました』

『お疲れさま。何か、つかめたかな』

『はい。快答ルパンは、どうもテンに関係している気がします』

『それはいい点に気づいたね』

『かんてん、えびてん、ばくてん、いだてん、めがてん……。きっとこの中に、快答ルパンを盗んだもののヒントが隠れている気がします』

『なるほど。その中に、視聴率を上げたいと努力している真犯人がいるに違いない』

 

【挑戦状】

□これで、問題編は終わりです。ヒントは、すべて問題文の中にあります。謎解きクロスを解き、容疑者の中から真犯人を探してください。健闘を祈る!

【ヒント】

【予告編】(縦 6) 【一味】(縦 8) 【区別】(縦 9)

《今宵》(横 5) 《知恵比べ》(横10) 《天気》(横14)

2019年7月6日