この短歌の作者は誰?<4>

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■快人五面相の誕生

いくらする江戸川乱歩先生の『怪人二十面相』の著作権が切れているとしても、それをそのまま活用するのは忍びない。作家魂が、泣く。

謎解きクロスもパズル小説も、ただの言葉ではあるものの、その背景には『まだ誰も生み出したことのない作品を創造する』という大志がある。

私も江戸川乱歩先生を尊敬し、を感じてはいるが、ただの隠し芸で終わりにするわけにはいくまい。これは人としての品(ひん)格の問題だ。

たとえば遠い外国、孤立するに10名の仲間が集められる。

そこで謎の図画に書かれた暗号の通りに、次々と殺人が……。

登場人物が、それぞれ知恵を出し合って実業家美人お供を守ろうとするストーリー。殺されるときに何か合図をしている死体。

晩餐のシメに食べたもやしソバも、きっと何か意味があるのだ。ただ、いくら秀逸なミステリーを書いても、その根本的な謎解きのコンテキストが、あの作品に似ていたらアウトだろう。アガサ・クリスティの作品と設定が似ている。

それはのすること。モノマネであり、これでは日本国内で通用しても、外貨を稼ぐことはできない。

檸檬という短編で、梶井基次郎は富士山の形ではなく重さを語った。作り物の模型などにはない大自然の重さ。

暖をとる火鉢は、で包めば持ち運びができる品(しな)だが、冨士山は動かない。運べない。その重さを感じたいという梶井基次郎。

そこで登場するのが、怪人二十面相ではない真逆のキャラクター。それを私は快人五面相と呼ぶことにする。彼の好きな音楽はジャズではなく演歌だ。

事件を起こしては、ゴメン、ゴメンと謝る、気が弱いスーパースター。それがパズル小説の主人公なのである。

2019年3月2日