新刊のご案内です。何と、コラムとして5作も、謎解きクロスを挿入していただきました。ありがたいことです。
日々、ご活躍のこととお慶び申し上げます。2020年3月3日、辰巳出版より【仕事に効く人生に役立つ 大人のための「寓話」50選】が刊行されましたので、ご案内いたします。 【内容紹介】 「寓話」だから、面白い! 「寓話」だから、わかりやすい! 「寓話」だから、心に刺さる! 仕事に効く。人生に役立つ「寓話」をご紹介。「寓話」は最良の『転ばぬ先の知恵』。中国古典から世界の民話、500社を超える中小企業とのビジネスから学んだ教訓話まで、新しい寓話・エピソードネタを駆使して、あなたのビジネス・人生にあかりをともす大人必読の啓発書。全50の寓話がいままでの「あなた」を確実に変える!
【コンテンツ】 ※あなたの人生の成功をもたらす10テーマ(50寓話)
第01章 自分自身をまず知るための寓話5 第02章 生活習慣を少し変えるための寓話5 第03章 正しい目的を見つけるための寓話5 第04章 自分のモノサシを持つための寓話5 第05章 他者の利益まで考えるための寓話5 第06章 相手の話をきちんと聞くための寓話5 第07章 仲間とうまくやるための寓話5 第08章 成功への環境を整えるための寓話5 第09章 思い上がりを戒めるための寓話5 第10章 生き方のスタンスを確立するための寓話5
現在、月刊し「きらぼし」にて「大人の寓話」を、不定期に連載しています。そこでは、こんな現代の寓話も、オリジナルで創作しています。
【令和の寓話】
気が付いたら、F氏は死ねなくなっていた。いつからその病にかかったのか、まったく記憶にない。
「かわいそうに。20才になったとたんに交通事故で死ぬなんて」
病室では、父と母と仲良しの妹が、涙を流していた。F氏は思った。
「サヨナラだけが人生。悔いはない……でも、さびしい」
F氏は、20年を過ごした身体から離脱し、別の生物に乗り移った。
「かわいそうに。働き盛りの40才で、ガンになるとは」
F氏は、震えた。せっかく三年前に、若くて美しい妻をもてたのに。彼は思った。
「サヨナラだけが人生。悔いはない……でも、さびしい」
たまに、同じ病にかかっている人と出逢い、告白をして夫婦になった。しかし、どんなに幸せな時間を過ごしていても、必ず終わりがやってくる。
先に離脱するのが相方の場合は、とくに悲しかった。
せっかく「不死の病」について語り合えるパートナーをみつけたのに、別れがくる。しかも相手は、次にどんな生命に宿るのか、まったく決まっていない。
移った身体が人間でなくとも、犬や猫ならペットショップにいるかもしれない。しかし、アマゾンの熱帯魚では、語り合うこともないだろう。カブトムシとかイワシとかネズミになっていると、何も思い出せないまま、最期を迎えた。
「サヨナラだけが人生。悔いはない……でも、さびしい」
それでもF氏は、生き続けた。
そのうち人間として生まれても、何も期待しないので、感動がなくなった。幸せの実感もない。ただただ離別のときを待った。
そのうち新型ウイルスが人類の数を減らし始め、焦った一部の暴徒が起こした核戦争で、乗り移るべき人間が居なくなった。
F氏は別の生物に転移しつづけたが、考えることができないので、何が起きているかも認識できなかった。
【解説】
もちろん「不死という病」はない。一般的には「不治の病」と書き、決して治らない病気のことをさす。
リアルな空間なら、すべての生命体は「生まれたら死ぬ」と決まっている。
この寓話でも、個々の生命は臨終のときを迎える。しかし「魂」や「心」あるいは「文化(ミーム)」と呼ぶ何ものかが残り、別の生物に転移することで何かが持続していく「輪廻」のような考え方もある。
古代中国でのこと。秦の始皇帝は「不老不死」を求めて様々なことを行なった。だがそんな都合のよい方法はなく、逆に水銀に由来する「薬」を飲んで死期を早めたという説もある。
F氏の場合は不老は防げない。病は不死だけだったが、常に離別を経験する人生となった。それゆえ、いつも「さびしい」と感じてしまう。ここで別離ではなく未来の出逢いの大切さに気づけば、サヨナラの前に必ず素晴らしい出逢いがあったと思い当たる。
人生で重要なことの筆頭は、離別ではなく出逢いなのである。
【まとめ】
朝に「生命としての自分」との出逢いに喜び、夜に「出逢った人との幸せな時」を想い出して眠る習慣がつけば、いい人生。