夜の街を歩いて、気づくことがある。みんな、暗闇が怖いということ。夜の街のどこかに、きっと、あのブロックホールがある、そんな気がしてきた。
一昨日、フレンチをごちそうになり、久しぶりに伝説の人と話ができた。どうしても急性大動脈解離の話になり、九死に一生を得たことを、長くならないように、伝えることになる。
そこで励まされた言葉が「その体験を書いてください」。まさに、私は、自分の体験を語れる時代に入ったということか。そういえば、竹早高校の同窓会でも、臨死体験が感動につながった。
これまで私は他人を取材して、彼が体験したことを、自分のことのように語ることで、講演を成立させてきた。だが、もう一歩、聴講者の心に踏み込めなかった。
それは「自分の体験」の重みがなかったから。
これから私は、この世界には「今」しかなかったという体験を語り継いでいくことになる。たとえ明日がなくても、少なくとも、考えて、感じている私がある限り、まだ「今」はある。
それが私の、体験したこと。
だから「今」を大切にして、「今」を正直に生きたい。その視点に立つと、すべての外界は貴重にみえてくるし、自分が生きていることの奇跡が、いとおしくなる。
人との出逢いが、大切なことも、そこから来ている。