各駅停車に彩を添える謎解きクロス

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信州上田で、今年もミステリーウォークを推進していただけるとのこと。本当にありがたい。その打ち合わせとともね、残暑が終わって、すでに秋の気配が漂う信州に行き、しなの鉄道の観光列車「ろくもん」に乗ってきました。

上田に通い始めて、7~8年となりますが、いつも新幹線。特急も、高速バスも使ったことがありませんでした。

今回、しなの鉄道を満喫するという目的があったため、ふと思い立って新幹線をやめて、JRとしなの鉄道でけの、しかも快速は使うものの、ほとんど各駅停車で、行ってきました。

本を、一冊、読めました。

行きは、途中でJRの横川駅から軽井沢駅まで鉄道が途切れてJRバスとなり、待ち時間が1時間半ほどあるという、驚きの路線だったこともあり、新幹線なら軽井沢まで1時間半、しなの鉄道は待ち時間を入れて1時間半、計3時間で到着するはずが、朝9時に出て上田到着は16時なので7時間かかりました。

この3時間と、7時間の差を、どう考えるか。それが、人生に対する姿勢、価値観、すべて関わってくる哲学的な問題だと、7時間の間に思い当たりました。

新幹線指定席で行くと、3時間、仕事ができます。

各駅停車でいくと、座席の関係で、満員で立っていることもありますし、ふつうの座席で仕事モードは難しい。なので、いきおい、のんびりと読める本を持ち、読んでは考え、考えては読み。ときどき疲れて眠くなると、うつらうつら。それは瞑想のように、いろいろなことが脳裏に浮かんで消えていきます。

帰りは、行きと横川駅での待ち時間が1時間違うので、家まで6時間。新幹線の倍の時間。

ところが、どっちが充実しているかというと、各駅停車だったんです。驚きました。

これまで、3時間のところを6時間もかかったら、「無駄な時間」をすごしたと思ってしました。

でも、考える時間というのは、人生にも、仕事にも必要なんです。とくにコンセプトデザインという、わけのわからない先駆者の仕事をしている私が、考えることができなくなったら、アイデアを生み出せなくなったら、もう仕事はありません。

各駅停車は、ものを考えるのに、ちょうどいい。

新幹線や特急は、考える場ではないのです。身体がビューんと走っているので、思考が、後ろに取り残されてしまいます。

とくに謎解きをするには、各駅停車で、時間を気にせずに、じっくり考えられるというのは、適しています。

途中で、接続のために30分とか、駅で待ちます。これも、無駄ととらえれば、それまで。

人生において、無駄な時間は、どこにもありません。休んでいる時間も、仕事をしている時間と同じ、貴重な人生の時間なのです。

ああ、そういうことも、今まで気づかずに、ひたすら新幹線で目的地に行く。行ってから、すぐに人に会う。打ち合わせをする。そんなパターンで生きてきました。

なんだか、待ち時間があると、損した気分になるのです。たとえば、接続の時間が少なくて、走って、目の前でドアが閉まって、間に合わなかったとき。次の電車が15分後だと「ああ、何でもっと早くは知らなかったのか」と悔やみました。かつては。

50代あたりから、身体が動かなくなったので、また急ぐと足がもつれたり、階段を踏み外したりするもので、あまりあわてなくなりました。それでも、目の前でドア゛が閉まると、

「閉めたな! なんてこった」

と、あろうことか運転手の肩に悪態をつく自分がいました。

それが、これからは違います。もし。目の前でドアが閉まって、乗れなかったら「あ、時間をくれてありがとう」と、運転手さんに感謝できる気がします。

各駅停車は、そんなことを教えてくれました。

ちなみに、各駅停車の旅では、謎解きクロスの本が売れると思っています。きっと。それを意識して、問題を作りたいなぁと思っています。