パズル小説®の原点⑥

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謎解きクロス®は、ミステリーウォークを展開するためのツールとして開発しました。2003年から、深谷宿ミステリーツアーの小冊子原稿を創作していたミステリー作家の故・伊井圭さんは、小説はスムーズに書けるものの、そこに嵌め込む謎の制作に苦労していました。

ミステリーツアー(ウォーク)は、エロ・グロ禁止。誰も死なないミステリーなんです。そこで読者、参加者の興味関心を引き、謎解きにチャレンジしてもらうためには、暗号やパズルのような、客観的な正解がどこかにあって、難しいけれども解けた(完成した)ときに、大きな達成感があるツールが必要でした。

一方、私の場合は、小説の好みでも偏りがあります。細かいディテールには、ほとんど興味がない。そんなことを読んでいる時間があったら(作家の立場では、書いている時間があったら)ストーリーを進めてほしい。多少、リアリティがなくても、ストレートに動いていく物語が好きなんです。

逆に、小説が好きな人は、だいたいディテールにこどわります。そのとき、どんな仕草をしたのか。どんな目をして、どんな空気をかもしだし、手の動きはどうだったのか。それに対して、相手の反応は、どうなのか。そういうことが、きちんと書いてあることで、小説世界を頭のなかに構築できるといいます。

いろんな立場があります。ただ、私には、そもそも現実問題としてディテールにこだわにない日常があるようです。シャツを着るときに、どの色とデザインのシャツなのか。ズボンはどうするか、まったく興味がありません。とある作家さんのホームパーティーに、5年連続、顔出したときのこと。

いつも年末のパーティーで、私は、たくさんあるスーツの中から、いつも濃いパープルのだぼだぼスーツ、シャツは金ラメのストライプが入った黒いYシャツ。ネクタイは赤のラズベリー柄。最後に記念撮影をするのですが、誰かが「これまでの記念撮影の写真」を4枚、持ってきました。

その写真には、だいたい10人から15人くらい写っているのですが、なぜ、写真をもってきたかというと「大発見がある」という。会場はメトロポリタンホテルですが、「4葉の記念写真に共通しているのは何」と彼。みんなで確認していると、誰かが「ん、廣川さん……凄い」と、目をきらきらさせました。

みんな、凄いのはPartyの「皆勤賞」のことだと思っていましたが、実は過去4枚の写真の服装が「まったく同じ」ことに気付いたのです。しかも、その日も、ネクタイも含めて同じなので「よほど貧乏なんだ」「よほどスーツがないのだろう」「きっと勝負服よ」「でも似合う」などという声が飛び交いました。

まあ、パーティーのときはこの服と決めていて、同じかどうかが話題になるとは考えたこともなかったのです。そんなこんなで、いわゆる「小説」を書くのが苦痛。だから、謎解きクロス®はさくさく作れるのですが、そのあと、小説を書くのに苦労しています。伊井圭さんの真逆なのです。

だから、深谷宿ミステリーツアーを全国展開するときに、「私が謎を考えるから、伊井さんが小説を書いてください」なんてことを話し、誰もしなないミステリー小説で、二人で江戸川乱歩賞をとろう、なんてドリームで、終電まで飲み明かしたのです。

2020年5月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : wpmaster