もちろん、漁船でも渡し舟でもない。青年の頃から、豪華客船での船旅にあこがれている。1980年、エーゲ海を、1ヶ月間、けっこう大きな客船で周遊した。
ロードス、クレタ、ミコノス、そしてサントリーニ島などを、のんびりとめぐった。半分が客船、半分がユースホステルなど。真夏とはいえ海岸で寝ると警察に引っ張られるので、宿はとった。
ただ船舶では、甲板にゴザを敷いて眠る、バックパッカースタイル。ドイツ人の女性が、冷えていない瓶ビールの栓を自分の歯で食いちぎるようにしてスポっと開けて飲んでいた。
そのとき、私は誓った。将来、作家になって豪華客船で世界旅行をしよう。そのときは、毎日好きな食べ物を食べ、酒を呑み、エンタテイメントも楽しむことだろう。
そして、当時はまだ意識していなかったが、世界中の世界遺産を観て歩く。それが、私の夢になった。そして、残念ながら、夢は夢のママ、実現できていない。
もし、それができるなら、そのときはベストセラーを書けたか、描いている絵が認められ、売れて、豪華客船による世界旅行ができる立場になっている必要がある。
そんなことを思い出すのも、きっと手術を前にしているから。毎晩、本当にたくさんの夢をみる。夢で、押しつぶされそうになる。でも、みんな懐かしい夢だ。
苦しい夢は、記憶にない。
都市をとるということは、いいことだけしか思い出せないことなのかもしれない。嫌なことも、つらいことも、苦しいこともたくさんあったけれど、それは過去にどんどん吸い取られていく。
夢は、過去に出逢った人がでてくるものでも、必ず、未来につながっている。だから、夢から覚めたら、すぐに机に向かったり、絵を描いていたりする。
私は、きっと船に乗る。
そのためにも、来年、必ず個展を実現し、しかも成功させたい。成功とは、これまでご縁のなかったみなさんが個展に来て、私の酸品をたくさん買ってくれること。
売れた金額によって、世界旅行の日数が決まる。
期待している。
