明けましておめでとうございます
謎解きクロス11×11の新作問題は、こちらになります
【謹賀新年 2023年 元旦】
今年は春から~絶好調
新年を迎えると、不出来な自分を忘れ、今年は何かできそうな気がしてくる。初詣のおみくじにも、昨年の落とし物が見つかるとあった。
その予感は、早くも初夢に表れた。
私は、麹町にある大使館の中庭にいた。あとで考えると、そこは2001年の夏、月はじめの昼下がり。中庭では生ビールを楽しむパーティーが開かれ、私も参加していた。
中庭は日本庭園を模していた。池があり、小さな築山があり、小径を歩けば芭蕉の句碑が立っている。もちろんEUにある国の大使館ゆえ、土を覆っているのは苔ではなく芝生なのだが。それでも、日本文化への尊敬の気持ちは伝わってきた。
洋館の主人であるEU大使夫妻、料理や飲み物を運ぶ召し使いたちが数人いた。
いつもは観光客を迎える玄関の大きな鉄門は閉ざさせていたので、夢物語の登場人物は、10人に限られていた。
もちろん「10人」とは「住人」をかけているわけではなく、アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』のゲストの数に合わせている。ミステリー好きの私の夢なので、中庭にある芝生では、黒い野良ネコがひなたぼっこをしていた。
夢というものは不思議なもので、自分の目線だけではなく、ときどきドローンのように高いカメラアングルから全体を俯瞰してみていたりする。
これまで何度か大使館のパーティーに呼ばれていたが、みたことがない新規の客がいたので声をかけたのだが、しばらく二の句が継げなかった。
彼女の瞳が、これまで見たことのない緑青に近い色をしていたから。
カラフルな七分袖のブラウスは、彼女の真っ白い素肌を輝かせ、胸元には古い金貨をあしらったペンダントがきらめいていた。きっと値打ちものに違いない。
私は、夢のなかでドギマギしていた。
それまで、昭和フォーク『木綿のハンカチーフ』にある恋にあこがれていた私は、逆に自分が東京の田舎者で、グローバルに活躍している彼女がまぶしくみえたのである。
勇気をふりしぼり、ジャパニーズ・イングリッシュと身振り手振りでコミュニケーションしているうちに、「一緒に来て」と言われ、彼女と東屋までたどりついた。
中央には太い柱があり、そこに一体の操り人形、いわゆる傀儡(くぐつ)が飾られていた。
それをみながら、彼女が言った。
「親の因果(いんが)が子に報い。蛙の子はカエル、クモヒトデの子はたいてい5本の細長い脚をもち、軍鶏(しゃも)の子は闘いが好き」
ただの勘でしかなかったが、彼女との出逢いは人生を変えると確信していた。ちなみに、彼女は心の友として、2023年の今日でも私を支えてくれている。
夢はまた、パーティー会場に戻っていた。
白いテーブルクロスの上には、香草と塩を効かせたローストチキン、当時はまだ知られていなかったジビエ料理として鹿のカツ、和食の象徴として真鯛の刺身とキスの天ぷら、カブなどの野菜を煮こんだ汁(しる)ものも用意されている。
料理人は二人いる。恰幅のいい料理長と、若い料理人。彼は、別に隠し事をするわけでもないのだろうが、料理長の甥(おい)にあたる。
パーティーは、日が暮れるまで続き、参加者の10名は、館内のゲストルームに案内された。参加者の10名は、3つの班に分かれた。女性3名で1班、男性3名で1班、そして男性4名で1班である。
ゲストルームにはロックのかかる頑丈なドアがあり、真ん中に菊の御紋があった。ルームに入るには暗証番号が必要となる。2001年夏の夢のはずだが、いつのまにか現在のセキュリティシステムにすり替わっていた。
そして9人が寝静まったころ、誰かがかいていた大イビキがピタリと止まった。そして翌朝、最初の遺体が発見され、探偵役が得意顔で事件のポイントを語っている。
残念ながら、先が知りたくなったとたんに意識が覚醒し、私は目を覚ました。そして夢のことを思い出しているうちに元気がでてきた。
週末になったら、この続きを書き溜め……パズル小説の事例を増やしたいと思った。
生命の星である地球は、温室効果ガスで瀕死の状態。今も世界のどこかで飢饉に苦しむ子どもたちがいる。
私は重い腰を上げ、新たな景色を探した。自分にできることは、これからも真面目に創作活動を続けることしかない。
2023年元旦 みなさまのご多幸を心より祈念いたします
※日本初のパズル小説®作家 廣川州伸