日本初のパズル小説®作家の廣川州伸です。しばらく、脱コロナ時代の三種の神器「編み物」「読書」「パズル」について考えていきます。
これまで私たちは、さまざまな制約はあるものの「人間として親密な関係になること」に幸せを求め、他人とのつながりを重視してきました。リモートでつながることも、ないよりはいいのですが、やっぱり人生、直接的な「ふれあい」が、最高の幸せであることに変わりはありません。
それでも、社会が複雑になるにつれて、科学技術、とりわけICTの進化によって、私達は直接ふれあうこと以外の「つながり」を、さまざまな形で発明し、発見し、実現してきました。リアルタイムで自由に話し合うことができるなんて、たった100年前には、まだSFの世界でした。
ところが、ICTとAIの進化が、今、社会を大きく変えつつあります。誰もいない工場でつくられた製品が、誰もいないクルマに乗って運ばれ、ロボットやドローンによって各家庭に届けられる。人との接触を極力減らすようなICTのインテリジェント社会に向かって、私達は進んでいました。
その一方、どうもデジタルだけでは人間は幸せになれないという新実も、浮彫になってきました。決定的なものが、足りない。そこで、昔ながらの直接的なコミュニケーションの魅力が、見直されました。私達は、リアルなふれあいが大好きで、それをICTに代替するわけにはいかなかったのです。
そんなときに、狙いすましたように、コロナ禍が襲い掛かりました。「直接時なCommunicationではなく、リモートでのふれあいを」という時代に大きく舵をきったのです。これは「コラボ」ではありません。「三密」を禁止して、リモートのデジタル・コミュニケーションを進めなければいけなくなったのです。
そんななかで迎えた脱コロナ時代・三種の神器「編み物」「読書」「パズル」は、直接的communicationとは別に、自分ひとりの時間で何ができるか、どんな行動をとればいいか、充実させるツボをとらえたものです。
ミステリーウォークは「みんなで楽しむ」ことができますが、脱コロナ時代・三種の神器は、ひとりで楽しむことを前提としています。だから、テレビやインターネット向きではないんです。実際に。
結論を記しておくと、それは「一人芝居」であり、観客は「自分」です。他者との直接的なCommunicationを前提とはせず、未来に向けた時間の使い方をする「一人芝居」が、これから求められると思うのです。