快答ルパンの冒険<1>

パズル小説 快答ルパンの冒険<1>

【日本初・パズル小説家】廣川州伸(74回生)

 

 

□パズル小説は、廣川が開発した謎解きクロス®というパズルを使った小説で、本稿は特別に書き下ろしたもの。全体のタッチは江戸川乱歩調ですが、パズル小説は子どもから大人までカップルでも家族でも安心して楽しめるようエロ・グロ禁止となっています。

 

□快答ルパンは、廣川が書くパズル小説の舞台として設定された探偵@ホームズ事務所のライバル。探偵@ホームズと知恵比べをする快答ルパンは、いつも難しい問題を何題か提示します。

 

□快答ルパンの冒険は、原則として毎月1回アップする予定。その問題は謎解きクロス®9×9を使った本格的なパズル小説となります。

 

■プロローグ

 

ある晴れた日の朝。

「大変です! 池野所長、起きて!」

と叫んだのは、アルバイトで探偵の助手をしている、大学生の東島君。

そこは東京・渋谷にある雑居ビルの一室。玄関に『探偵@ホームズ』という看板のある小さな事務所である。

もっとも探偵といっても、その事務所では殺人などの凶悪事件や夫婦ゲンカなどのややこしい事件を調べることはしない。

彼らの専門は、地域の文化や歴史、魅力が失われたという謎を解明することで、罪のない話が大半だ。心の傷をえぐることもないので、痛みもなかった。

「東島君、どうしました? まさか、また快答ルパンが……」

「さすが所長。素晴らしい推理力。勉強になります」

「おいおい、朝からヨイショしなくてもいいよ。ぼくのところにも快答ルパンから挑戦状が届いたからね。今度は、ある書店にまつわる謎解きらしい。神奈川のほうに冒険に行き、江戸川乱歩の世界を盗んできたらしい」

「なんか、不思議な窃盗ですね」

「確かに、セットになっている!」

以下、快答ルパンの挑戦状に書かれている謎を提示しておこう。

 

□第1の謎(快答ルパン)

 

横浜①スタジアムが見える高台の一軒家で、その難事件は幕を開けた。

たまには男の②手料理でも作るかと新しいレシピを探しに図書館に行った帰り道でのこと。私は、そびえたつ洋館の門前で怪しい一団の一人に声をかけられた。

「あら、こんばんは。どちらまで?」

彼女は、はっとする③目鼻立ちの美人だが、よく見れば顔なじみだ。

「ちょっと図書館に。あなたは?」

「この洋館でミステリー・パーティがあると聞いてきたのですが、呼び鈴を鳴らしても、誰も出てこないの」

「へぇ。ミステリー・パーティですか。なんだか面白そうですね」

「よかったら一緒に参加しません? 会費は5千円ですが」

そんなことを話しているうちに、門前の人々の数も増え、やがて玄関から執事らしき黒服の老人がでてきた。

「申し訳ありません。呼び鈴が故障していたようで。さ、お入りください」

私たちは洋館の中に入った。大きな玄関の扉を開けると、フランス料理の匂いが漂ってきた。

通された④応接間の中には、すでに少なからぬ先客がいた。彼らは、いつから飲んでいたのだろう。数時間後、出窓の外はすっかり銀世界になっていた。

庭で⑤雨ざらしになっていた竹細工の人形も真っ白になり、とても寒そうだ。

と、そこに叫び声があがった。

「ギャー! 誰かー!」

どうも、洋館の二階らしい。誰も走り出さないので、仕方なく私が階段をのぼって駆けつけてみると、廊下の突き当たりのドアを例の執事が叩いている。

「ここは寝室ですが、中から叫び声が聞こえたので来てみますと、ドアに鍵がかかっていて開きません」

私は、斧を振り下ろした。

開いた穴から手を入れて、ロックを外す。室内は暗かった。廊下の明かりから、ベッドの上に寝そべる人影が見えた。動かない。私は、室内のスイッチを探して明かりをつけた。そのとき風が吹き抜けた気がした。

「あ、あれは!」

ベッドの上には、お定まりの死体があるほか誰もいなかった。窓は、どれも内側から鍵がかかっていたし、秘密の通路も、動物が出入りするような煙突もない。

これは密室なのである。私は、死体に触るのは苦手だ。というより、それが生れて初めてみる、たぶん本物の死体?

もしミステリー・パーティだとわかっていなかったら、そもそもドアを打ち破って中に入ることはしなかった。誰かが死体に近づき、ここで殺人事件が起きたことを宣言した。

「ぼくは医学部の学生です。確認します」

私は、ちょっとだけ冷静になってきた。これがミステリー・パーティなら、真犯人は、この近くにいる。数えてみると、室内には8人が入り込んでいた。

この中の誰かが真犯人なのだろうが、見つけるのは容易ではない。なぜなら、すでに「その瞬間」はすぎてしまったから。

少し落ち着いてきた私は、こんなことを考えた。

密室でおきた事件は⑥被害者加害者の区別がつかないことがある。すなわち、自作自演というやつだ。

命がけで演技すれば、密室で事件を起こし、入口を壊して入った者と入れ違いに廊下に出て、まるで今かけつけたように目撃者になることもできる。

そもそも⑧大都会には、江戸川乱歩の小説にある黒蜥蜴のような女性がいる。実は、洋館の前で会った彼女も、集まっていた人も、みなグルだったのかもしれない。

窃盗団は⑨努力家であるとともに、互いに助け合う互助会のようなもの。

「SNSで調べたら殺された人は水泳の⑩指導員。詳しい情報はプロフィールが非公開で、よくわからないわ」

その後、彼女は⑪独り言を言うので、私は近くに落ちていた紙の余白に殴り書きをした。その紙は⑫カレンダーだったが、事件とは無関係とは思われなかった。

そのとき突然、私は思い出した。その洋館のことを、街の住人が何と呼んでいたのか。そして理解した。私たちは、とんでもない難事件の渦中にいることを。

 

さて、謎を解くための準備は整った。

 

これまでの文章には①から⑫までの記号が付けられている。しかもその記号には、読み仮名にすると5文字のゴシックのキーワードが含まれている。

それぞれ、キーワードは窃盗、もといセット、すなわちペアになっているが、不思議なことに、5文字の「ど真ん中」の文字が共通になっている。

その①~⑫の文字を解答記入欄に記入れば「第2の謎」は解けるだろう。

■第2の謎

 

■はじめに

 

おそらく、みなさんも竹早高校図書室の数十倍の時間を、都心にある書店で過ごしたのではなかったか。快答ルパンも例外ではない。

三省堂、書泉とならんで、快答ルパンが好んで立ち寄ったのが、Y堂である。

今回、快答ルパンは、横浜へと冒険に出た、そこでY堂の歴史を学びながら、本好きの容疑者の中から、Amazonでパズル小説を購入し、書評で★五つの高評価を残し、友人知人に「意外に面白いし、全部解くのは大変だけれど、購読者特典として謎解きクロスの作り方もゲットできるから、お買い得の本」などと勧めてくれた真犯人は、一体、誰かを謎解きしていただきたい。

 

■容疑者登場

 

快答ルパンの提示した謎は、単純である。

お金を払って「謎解きクロスを使ったパズル小説」を、Amazonで購入してくれた「とってもいい人」を見つけることだ。

その容疑者は、以下の五人となる。

 

【容疑者】

□吉岡新鮮さん……新鮮な記事を書くジャーナリスト

□篠辺修業さん……天気予報を伝える人気キャスター

□高倉孝匠さん……甲子園を目指す野球チームの監督

□中村光臨さん……清里の野菜で作る和食料理の達人

□薩田美子さん……イタリア直輸入の雑貨店オーナー

 

■東島君、容疑者にせまる

 

東島君は、まず飯田橋に行き、吉岡さんが経営している出版社の応接室に入った。

出版業界の現状に詳しい吉岡さんに、Y堂の歴史について教わりたいと電話を入れてあったのである。

「東島君、快答ルパンは書店に関心があるようだね」

「はい。今回の謎解きは出版業界、というよりも書店の歴史を知る必要があります。博学の吉岡さんなら、Y堂の歴史をよく知っていると思いまして」

「Y堂ね。快答ルパンの提示した謎解きクロスの解答は、たしか9文字。横浜の文字が入るような気がするけど、どうかな。伊勢佐木町かもしれないし」

「なるほど、参考になります」

 

ここで吉岡さんが2時間かけて東島君に語ってくれたY堂の歴史を、かいつまんで、といってもちょっと長いが、紹介しておこう。

 

東京・神奈川・千葉に店舗を展開し、伊勢佐木町に本店を構えるY堂。

その名は論語の「徳不孤、必有隣」という言葉に由来している。意味は、徳を積んだ人は孤独にならず、必ず隣に誰かいるようになるということ。

そこには、隣近所に住む人が自然に集まるような場所になってほしいとの思いが込められていた。

Y堂を創業した大助の父は源蔵といい、新潟県小千谷市で生まれた。

源蔵の家は農家だったのかもしれないが、源蔵自身は麻織物の小千谷縮(おぢやちぢみ)行商人となり、たまに横浜に来て商売をしていたという。

源蔵は、横浜で妻となる女性と巡り逢って結婚し、根を下ろした。そして明治10年代の中ごろ、横浜市尾上(おのえ)町で「貸本屋」を始めた。

創業者の大助は、源蔵の四男として明治17(1884)年に生を受けたものの、大助が2歳のとき、源蔵と死別。

そこから、大助の労苦が始まる。

 

家業を継いだ長男の貞造は、尾上町から、隣接する吉田町に移って「Y堂」という書店を開業した。明治27(1894)年のことである。

明治33(1900)年に、大助の姉ロクと結婚した鐘太郎によって「第二Y堂」が開業すると「Y堂」は「第一Y堂」に改称した。

その後Y堂は「書店」として暖簾分けを進め、最盛期には「第一」から「第八」まであったという。

明治42(1909)年、大助は現在の伊勢佐木町本店所在地の一角にあった倉田屋という書店が廃業したお蔭で「第四Y堂」を開業することができた。

そこは、木造2階建て間口2間(3.6m)、奥行き3間(5.4m)という狭い店舗だったが、大助にはかけがえのない場所となった。

 

Y堂が創業した横浜は港町であり、当時の日本のなかでも、特別な土地柄であった。何よりも、横浜の人たちはハイカラ好きだった。

それでY堂では、創業の初期から万年筆、鉛筆、ノートなど「文具」の品ぞろえに力を入れた。

もちろん外国の貴婦人や船員相手の踊り子に気に入られたいというよこしま意図はなく、純粋にファッショナブルな新商品を好むという気質があったのだろう。

これは余談になるが、東京ではカジノ特区が話題になっているが、横浜こそそれが相応しい場所ではないだろうか。

近隣には、界に誇るの街、横浜中華街がある。もってこいの土地柄だろう。

 

■なぜか、篠辺さん登場

 

ここまで話したとき、容疑者の篠辺さんが遊びに来た。

「あ、これは珍しい。篠辺くん、なんとかホールディングス副社長を退いてから、何だか楽しそうだね」

「今まで、責任ばかり重くて、肩がこっていましたから」

「ストレスがないってことは、いいことだけど、今日は何か?」

「それが快答ルパンから、しちめんどくさそうなメールがきたんで、吉岡先輩に相談しようと……東島君がいるということは……謎は解けたの?」

「いえ、篠辺さん。今、吉岡さんにY堂の歴史を教わっていたのです」

「Y堂の歴史……確かに、快答ルパンの謎解きには欠かせないな。ぼくも、快答ルパンは横浜まで冒険に出ると思う。吉岡さん、ぼくにもY堂の歴史を聞かせてください」

「わかりました。Y堂といえば……」

吉岡さんは、東島君と篠辺さんの二人に語りかけた。

「あそこの社員は地味だけど、まじめによく働く。創業者の大助も、大晦日には帳面の整理で帰れず、元日の始発の市電で帰る状態。さすがに今日、そんなことをしたらブラック企業とみられてしまう……」

以下、ふたたび吉岡さんの話を、かいつまんで紹介しておこう。

 

あまり楽しみのなかった当時、書店で働くという仕事そのものに、大きな価値を見出すことができた。

人生とは、決して甘いものではなく、書物には人生のにも薬にもなる真実が含まれているが、言の葉には、未来を変えるだけの魔力もひそんでいる。

書店員がまじめなのは、そんな書物にある世界を、市井の人々に届けようという強いミッションがあるからだ。

Y堂は、順調に成長していった。大正時代の伊勢佐木町本店は、西洋風の凝った装飾の建物に変えた。

2階の上の看板にある文字は金色に輝いていた。

 

ところが、大正12年9月1日の関東大震災が襲った。

当時、横浜の人口は約45万人だったが、横浜は東京よりも地震の被害が大きく、一晩で市街地の中心部がほとんど壊滅。

その死者は23000人ともみられている。

なかでも一番ひどかったのは伊勢佐木町周辺。そこは飲食店が並んでいて火災が非常に多く発生したため、Y堂を始め伊勢佐木町周辺が、すっかり燃えてしまった。

明確な記録はないものの、横浜の温度計の示度は、きっと数百度を超えていたことだろう。

当時の伊勢佐木町警察署が管轄していた区域では、死者だけで12000人と、全体の半分が亡くなっている。もし東北を襲った東日本大震災のように大きな津波がきていたら、被害は数倍に拡大したはずだ。

 

震災で倒壊した企業の多くが横浜の外に出ていくなか、Y堂は再建を目指し、復興に努めた。

今思えば、関東大震災という大きな天災から立ち直って喜んだのも束の間のこと。わずか20年もたたないうちに、日本は戦争という地獄のような人災に遭遇する。

 

■突然、中村さんも加わった

 

「へぇ。そんなことがあったんですね」

「東島君は平成生れだから、昭和の戦争は何も知らないだろうね」

「何も知らない……そんなこと言われたら、いくら大人しいボクでも平静にはなれません……なんちゃって。吉岡さん、こんな感じでいいですか」

「まあ、30点かな」

などと話しているところに、また容疑者がやってきた。

吉岡さんは、高倉さんを見て笑った。

「あ、高倉さん。けっこう飲んでいますね」

「そんなことはありません。スコッチだけ」

東島君は、笑っていいのか悪いのか判断がつかず、篠辺さんをチラリと見たがガックリと脱力感がただよっていたので、それにならった。

「ところで、みんな何していたの? まさか快答ルパン?」

「どうも快答ルパンは、Y堂の歴史に関わる冒険に出たらしいと、池野所長から連絡があってね、それで東島君にY堂の歴史を伝えていたところなんだよ」

「それで、何かわかった?」

「まだ、なんとも……」

 

昭和16(1941)年12月、太平洋戦争が始まると、戦争という狂気が、すべての国民を武装した過激派に変えてしまった。

尋常ではない非常時になると、市民は、まるで何かが乗り移ったような憑代(よりしろ)の状態にあったのかもしれない。

戦時下では、「同位角は等しい」などという幾何学の本に象徴される理科系の本が売れたものの、盛り場の伊勢佐木町界隈にも軍の工場ができたりして、すっかり様変わりしていく。伊勢佐木町のY堂は木造2階建てであった。

そのこともあり、昭和20(1945)年5月29日の空襲で、十万発以上といわれる焼夷弾によって、あたりは焼け野原と化し、Y堂も灰となった。

 

昭和20(1945)年8月15日。真夏の昼下がり、日本は終戦を迎えた。

戦後、Y堂は本牧の倉庫で営業を再開したものの、伊勢佐木町の敷地は米国の駐留軍に接収された。

伊勢佐木町にY堂本店が復帰したのは、昭和31(1956)年のことである。

中2階がある店舗のデザイン。その当時、横浜で洋書を本格的に扱っていたのはY堂くらいだったという。今でいうY堂ギャラリーの発想に近いものがあった。

昭和30年代、洋書は大きな木箱に入れられて船便でやってきて、横浜の倉庫に収まった後、Y堂に運ばれた。

そのとき、高倉さんのスマホが鳴った。

「はい、高倉です。ああ、竹早高校テニス部のパーティ、横浜異人館を予約してくれたのね。場所はネットにも出てないから、伊勢佐木町にあるY堂本店の1階で待ちあわせとしよう……会費5000円で飲み放題って、いいんじゃない」

高倉さんが、篠辺さんに目で合図をする。二人は、竹早高校時代にダブルスの名コンビとしてならし、都大会でも活躍した歴史がある。

高倉さんがスマホから耳を離したので、吉岡さんはY堂について語り始めた。

 

■そして容疑者全員が揃った

 

飯田橋にある吉岡さんの会社に集まったのは、アルバイト探偵の東島君、それに容疑者の吉岡さん、篠辺さん、高倉さん。

東島君は、ストーリーの都合上、ここに容疑者全員が集まってくれれば話ははやいと思っていたところ、都合よく中村さんが顔を出した。

高倉さんが、ドヤ顔でつぶやいた。

「おいおい、また遅刻かよ」

「そんなことないよ。ここに集まろうって約束していたわけじゃないから。何時に来ても、遅刻じゃないよね」

「なるほど。で、君もやっぱり快答ルパン?」

「そう。これから横浜スタジアムに生ビールを飲みに、いや野球観戦でいくんだけど、気になって立ち寄ってみました」

「ナイターか。昨日は横浜が負けて」

中村さんがそこまでいいかけると、紅一点の容疑者が割って入った。

「泣いた……ですよね」

「あ、薩田さん。イタリアじゃなかったの?」

「そうそう、旅行ばかりしてはいられません。わたしもY堂の歴史に興味があります。人にも会社にも、書店にも歴史があるのね」

容疑者たちは、再び、吉岡の話に耳を傾けた。

 

今も、Y堂本店のある伊勢佐木町界隈では、夕刻になると飲食店に灯りがともる。

カフェでは、二の腕からにかけて隠す七分袖のブラウスを着た女性が、生ビールのジョッキを豪快に傾ける。ツマミカジキのソテー。

もちろんバーのカウンターでは、一人静かにバーボンをなめる男もいる。

ちょっと癖毛の髪は長いが、地毛を丹念に洗っているのだろう、さらさらとして清潔感がある。その傍らにある小冊子には、武者小路実篤のによる『Y』の文字があった。

 

Y堂では、お客様とのコミュニケーションを図るため、昭和42(1967)年12月に広報誌を発刊した。

創刊号には「楽しい読みものとして、お客様とのコミュニケーションの役割を果たすために企画した」という挨拶文がある。

深夜。伊勢佐木町のカフェでY堂の広報誌を手にした女性が、とある洋館に帰っていく。

そこは江戸川乱歩の作品にでてきそうな建物でABCDEFGHI『○○○○○』と呼ばれている。

 

さて、名探偵諸君。ヒントは、すべて本文に隠されている。

『謎解きクロス9×9』を解いて、その言葉を語った容疑者を特定させていただきたい。

 

健闘を祈る!

 

 

 

 

 

 

2020年2月1日

日本初!下仁田町で英語版パズル小説を試作

2年前、神奈川県の黒岩知事から「謎解きクロスの英語版があるといいね」とアドバイスをいただきました。研究すること2年。英語は「難しい」と思っていた私ですが、下仁田町の商工会からオファーをいただき、ついに「謎解きクロス7×7」のパズル小説、暫定版、試作バージョンですが、完成しました。

以下、試作版をご紹介しましょう。

■What is a puzzle novel?パズル小説とは何か?

A puzzle novel is written using Nazotokicross. Nazotokicross is the crossword puzzle of a new type. The key word that solves a crossword puzzle is contained in the sentence of a problem in case of Nazotokicross.

(和訳)

パズル小説は、Nazotokicrossを使って、書かれます。Nazotokicrossは、新しいタイプのクロスワードパズルです。Nazotokicrossの場合に、クロスワードパズルを解くキーワードは、問題の文の中に含まれています。

■How to solve Nazotokicross Nazotokicrossの解き方

□Please read all sentences of a problem.

□Next, discover the key word which a typeface is different from in the sentence of a problem.

□A key word has 22 pieces in all.

□The key word of 5 characters is incorporated into the mass eyes of the answer that is in a center.

□Your mystery becomes the key word that you write in a vertical mass eyes.

□You put one of the key words of 5 characters in the vertical mass eyes there and try to put the remainder in the sideways mass eyes.

□You connect to 5 characters well and find the key word that applies to the mass eyes.

□Repeat the trial and error and gather the words of ABCDE if all key words connect.

□If the word of ABCDE has a meaning, it will become a right answer.

(和訳)

□問題のすべての文を読んでください。

□次に、書体が問題の文の中で違うキーワードを発見してください。

□キーワードは、全部で22個あります。

□5文字のキーワードは、センターにある答えのマスに組み入れられます。

□あなたのミステリーは、あなたが垂直のマスの中で書くキーワードになります。

□あなたは5文字のキーワードの1つをそこの垂直のマス目に入れて、残りを横のマス目に入れてみます。

□5文字とうまく接続し、マス目にあてはまるキーワードを見つけます。

□試行錯誤を繰り返し、すべてのキーワードが接続するならば、ABCDEの言葉を集めてください。

□ABCDEの言葉が意味を持っているなら正しい答えです。

■問題文

□Japan enters from this to the new times.

A new wind is blowing in Shimonita-machi, too.Shimonita-machi, too, is the small city that is in Gunma Prefecture.An abundant natural environment is left in Shimonita-machi.” Konnyaku ” and ” Allium ” are the specialty which Shimonita-machi can be proud of.From this, the small city that is in a district might attract public attention. I think that I want to try the various challenges in Shimonita-machi.

 

□We met in social networking service.It received from her the message of ” where do you think now that you are? ” when there was.I found the place where I am with a global positioning system.She came to the city where I was born and brought up.

 

□I met her for the first time at a golden week in Shimonita station.She of the blue eyes was in Shimonita station.She came from Los Angeles.I remember well.The design of the unisex bag that she has as with a remarkable personality as her and nice.She has the sense of saying a GAG.

I, too, think so.

 

□It is half year after meeting I decided the marriage with her.She loves reading and spends all of the money on a book.The puzzle novel of the title of ” gather the ye rosebuds while there may be “, too, is her favoriteness.I don’t know who wrote this charming puzzle novel.A wedding was done on Dec.15th in the inn of Shimonita-machi. In a honeymoon, We went to Greece and stayed at a white hotel in a seafront.

 

□Do you know an artificial intelligence

From this, it is said that they are the times of AI.It is a central processing unit that is important with a personal computer.I want to record my experience to a SD memory card.I do the carbon copy that recorded a document.

I combine TA(terminal adapter)with a personal computer and get on the Internet.We think that we want everyone all over the world to know the nice happening by Shimonita-machi that I experienced.

(和訳)

□これから日本は、新しい時代に入ります。下仁田町にも、新しい風が吹いています。下仁田町も、群馬県にある小さな町です。下仁田町には豊かな自然環境が残っています。下仁田町が自慢できる名産品は「こんにゃく」と「ネギ」。これからは、地方にある小さな町が、人々の注目を引くかもしれません。私は下仁田町で、いろいろなチャレンジをしたいと思います。

□私たちは、SNSで出逢いました。ある時、彼女から「今、どこにいると思いますか?」というメッセージを受け取りました。私は、GPSで、自分がいる場所を見つけました。彼女は、私が生まれ育った町に来ていたのです。

□ゴールデン・ウィークに、私は下仁田駅で初めて彼女と会いました。青色の目の彼女は下仁田駅にいました。彼女はロサンゼルスから来ました。私は、よく覚えている。彼女の持っている男女両用バッグのデザインは、彼女と同じくらい個性的で、ステキだった。彼女には、ギャグを言うセンスがあります。私もそう考えます。

□私が彼女と結婚を決めたのは、会った半年後です。彼女は読書が大好きで、本にお金のすべてを費やします。「バラのつぼみは摘めるうちに摘め」というタイトルのパズル小説も、彼女のお気に入りです。このおもしろいパズル小説を、誰が書いたのか私は知りません。結婚式は下仁田町の宿屋で12月15日にされました。新婚旅行で、私達はギリシャに行き、海岸通りの白いホテルに泊まりました。

□あなたはAI(人工知能)を知っていますか? これからは、AIの時代だと言われています。パソコンで重要なのは、中央演算装置だ。AIで重要なのは、何でしょうか。私は、SDメモリカードに私の体験を記録したい。あるいは、文書を記録したコピーをとっておきたい。私はTAをパーソナル・コンピュータと結合し、インターネットに接続します。私が体験した、下仁田町でのステキな出来事を、世界中のみなさんに、知ってほしいと思っています。

2019年7月14日

パズル小説 快答ルパンの冒険(予告編)

【日本初・パズル小説】について

□パズル小説は、廣川が開発した謎解きクロス®というパズルを使った小説で、本稿『快答ルパンの冒険』は、篁会同窓会サイトのため、特別に書き下ろしたものです。全体のタッチは江戸川乱歩調ですが、パズル小説は子どもから大人まで、個人でもカップルでも家族でも安心して楽しめるようエロ・グロ禁止となっています。

□快答ルパンは、廣川が書くパズル小説の舞台として設定された探偵@ホームズ事務所のライバル。探偵@ホームズと知恵比べをする快答ルパンは、いつも難しい問題を何題か提示します。そして、たいてい五人の容疑者も提示され、犯人を誤認逮捕しないように調査し、その解答から一番心地いい「快答」をした人を、真犯人とする内容となっています。

□快答ルパンの冒険は、原則として毎月1回、気が向いたときにアップする予定で考えています。ちなみに、その問題は謎解きクロス®9×9を使った本格的なパズル小説となります。本稿は、謎解きクロス®7×7を使った簡易版のパズル小説で、これから始まる楽しい謎解きストーリーの予告編となっています。

 

■予告編

※以下のパズル小説は、竹早高校同窓会のサイトで2019年8月から毎月連載される予定の原稿を、広く一般読者にも開放し、併せてアーカイブとして保存することを目的に掲載いたします。

※今回は、予告編で、謎解きクロス7×7のバージョンです。

ある晴れた日の朝。

「大変です! 池野所長、起きて!」

と叫んだのは、アルバイトで探偵の助手をしている、大学生の東島君。

そこは東京・渋谷にある雑居ビルの一室。玄関に『探偵@ホームズ』という看板のある小さな事務所である。

もっとも探偵といっても、その事務所では殺人などの凶悪事件や夫婦ゲンカなどのややこしい事件を調べることはしない。

彼らの専門は、地域の文化や歴史、魅力が失われたという謎を解明することで、のない話が大半だ。心のをえぐることもないので、痛みもなかった。

「篁会の大森さんから、電話が!」

池野所長は、大きく伸びをして聞いた。

「どうしたの? まるで快答ルパンでも表れたような顔して」

「え? どうしてわかったのですか」

「それは、東島君。ミステリーウォークで使うパズル小説の出だしは『大変です!』で始まり、快答ルパンが難題を出すものと決まっているからさ」

「あ、恐れ入りました。今回も、あの快答ルパンが、凄いものを盗んだようで」

東島君の言葉を、池野所長は真顔で制した。

「それから先は、私が推理してみせよう。快答ルパンは、国民的テレビドラマの人気を盗んだに違いない。そこで困った大森さんが、後輩の東島君に相談してきた」

「さすが所長。よく、そこまで推理できますね」

池野所長は、東島君から手渡された珈琲を飲みながら、満面の笑みで応えた。

「それはね……大森さんが、とてもステキなレディだからさ。もう少し私が若かったら、きっとがけのにおちていたな。あぶないところだった……」

「所長、それって理由にならないような……」

実は、事務所で受けたメールは誰のメルアドでも、一度事務所の通信サーバーに入り、それから個々に配信されるシステムになっている。

すなわち池野所長は、スタッフならプライベートメールでも、事務所内に来たものであれば読みたい時にチェックできた。

それで東島君が「大変だ!」と叫ぶ少し前に薄目をあけ、スマホに転送されてきた東島君あてのメールを読んでいたのである。

「そんなことより、詳しい状況を報せてほしい」

実は、軽い老眼の池野所長は、細かい文字を読むのが苦手で、だいたいのことがわかったら細かいところは読まなかった。

「快答ルパンなら、相手に不足はない。今度こそ、快答ルパンの一味を、ひとあみ大臣にしてみせよう」

「ひとあみ大臣? 何ですか、それ」

「え? 知らないのか。をパッと投げて、魚を群れごとつかまえることだ」

「それって……一網打尽のことですか?」

「ん? そうともいう」

東島君が、大森さんからの依頼内容をまとめると、以下のようになる。

仕事でテレビ局に出入りしている大森さんは、竹早高校の先輩にあたる別次プロデューサーに呼び出された。

日ごろから

『いい仕事があったら紹介してね』

とお願いしていたので、その話と思ったが、渋谷にある国民的テレビ局食堂の片隅で、ヘルシーな大豆のサラダを食べながら聞いた話は、とても深刻なものであった。

快答ルパンは、篁会の発展にとって大問題となる、あるモノを盗んだという。

ちなみに彼は、あの怪人二十面相のように、誰かに成りすます名人だ。彼の変装は、本物と区別がつかない。どんな地位の人でも、そっくりに真似ることができた。

今回、彼が成りすましたと思われる人物は、以下の五人に集約された。どうしても、それぞれの人物に会い、知恵比べをして、真相をあぶりだす必要があった。

【容疑者】

□吉岡新鮮さん……新鮮な記事を書くジャーナリスト

□篠辺修業さん……天気予報を伝える人気キャスター

□高倉孝匠さん……甲子園を目指す野球チームの監督

□中村光臨さん……清里の野菜で作る和食料理の達人

□薩田美子さん……イタリア直輸入の雑貨店オーナー

 

池野所長に頼まれた東島君は、探偵@ホームズ事務所を出て、工事中の建物が林立する渋谷駅周辺の聞き込みに向かった。

 

渋谷ヒカリエの喫茶コーナーには、新鮮な記事を書くことで知られているジャーナリストの吉岡さんがいた。

「吉岡さん、こんにちは」

「おう、探偵@ホームズ事務所の東島くん」

「ごぶさたしています。吉岡さん……本物ですよね」

「え? なに言ってんだか。どうした? 失恋か」

「それは、違います。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「知らないけど、小枝などのスナック菓子もいいけど寒天を使った和菓子もいいよ」

 

渋谷ストリームの川沿いには、天気の予報を伝える人気キャスターの篠辺さんがいた。

「篠辺さん、こんにちは」

「おう、東島くん」

「篠辺さん……快答ルパンの手先じゃないですよね」

「え、どうした? 腹へっているのか」

「それも、違います。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「知らないけれど、飲みにいこうか。今宵の食事は海老天にしよう」

 

渋谷区立の植物園には、甲子園を目指す野球チームの監督である高倉さんがいた。

「高倉さん、こんにちは」

「おう、未完の大器と呼ばれる東島くんじゃないか」

「高倉さん……スマホで何を観ているのですか」

「体操のビデオだよ。どうした? 元気ないな」

「それは、大丈夫。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「知らないけれど、この選手はバク転で三回転。ハンパないだろう」

 

新しくなった渋谷区役所のロビーでは、清里の野菜で作る和食料理の達人である中村さんが涼んでいた。

「中村さん、こんにちは」

「東島くんじゃないか。珍しいね」

「中村さん……視聴率のこと、ご存知ですよね」

「ぼくだって竹早卒業生、そのくらい知っているさ」

「なら、教えてください。快答ルパンが盗んだものに心当たりはありませんか?」

「どうかな。それより、いだてん、いいドラマだよ。東島君も、このドラマを観れば人間のクズにならなくて済む」

 

最後に駅前のスクランブル交差点に行くと、パワースポットである金王八幡宮で巫女の職も兼務しているイタリア直輸入の雑貨店オーナーの薩田さんがいた。

「薩田さん、こんにちは」

「あら、東島くん。元気?」

「薩田さん……まさか、手先じゃないでしょうね」

「そんな、バルサミコでも舐めたようなこといわないで」

「失礼しました。快答ルパンが盗んだものに、心当たりはありませんか?」

「図書館に行って、頭を冷やして図鑑で調べたらいいわ。ほら頭寒足熱……どうしたの、東島君。目が点になっている」

 

容疑者の全員と会った東島君は、池野所長に連絡を入れた。

『五人の調査が終わりました』

『お疲れさま。何か、つかめたかな』

『はい。快答ルパンは、どうもテンに関係している気がします』

『それはいい点に気づいたね』

『かんてん、えびてん、ばくてん、いだてん、めがてん……。きっとこの中に、快答ルパンを盗んだもののヒントが隠れている気がします』

『なるほど。その中に、視聴率を上げたいと努力している真犯人がいるに違いない』

 

【挑戦状】

□これで、問題編は終わりです。ヒントは、すべて問題文の中にあります。謎解きクロスを解き、容疑者の中から真犯人を探してください。健闘を祈る!

【ヒント】

【予告編】(縦 6) 【一味】(縦 8) 【区別】(縦 9)

《今宵》(横 5) 《知恵比べ》(横10) 《天気》(横14)

2019年7月6日

この短歌の作者は誰?<5>

■ぼくらは竹早探偵団

太古の昔から、自然も人間も、そうそう変わるものではない。は、昔も今も街を覆うし、蛸の足は8本で、烏賊の足は10本だ。

明智小五郎の活躍していた明治時代と今では、100年しか違わない。

明治も平成も、季節には春夏秋冬があり、桜には河津やソメイヨシノなどの種類がある。

パンは小麦から作り、寿司の銀シャリはからつくる。

悪人を退治する明智小五郎の助手に『少年探偵団』があったように、快人五面相にも仲間が必要。それを『竹早探偵団』と呼ぶこととしたい。

明智探偵は、警視庁に強いコネがあり、交通事故を起こしても大目に見てくれる。

怪人二十面相も、犯罪者でありながら、とても稀有な存在だ。

ボルネオやビルマから戻った人物にすり替わり、警備の者がたくさんいるなかで、宝石を奪っていく。

してやられた大金持ちは、失意のまま眠りにつくことになる。

快人五面相には会津の生まれで、古風なところがある。

もし、読者が勤めを休んで、近くのに渡って休暇を楽しむときには、パズル小説を持って出かけていただきたい。

そしてギアをトップに入れて、謎解きを楽しんでほしい。

三浦しをんが書いた『舟を編む』という小説は、コツコツと辞書を編纂していく人の物語だが、パズル小説でも、コツコツと謎解きをしながら読むという、ある意味では地味な作業が必要となる。

それでも、竹早探偵団の活躍には、きっとわくわくするはずだ。最後は読者諸君の胸を打つ結末が待っているのだから。

竹早高校で青春時代を送った仲間は、篁会で人生の探検にでる。

2019年3月2日

この短歌の作者は誰?<4>

■快人五面相の誕生

いくらする江戸川乱歩先生の『怪人二十面相』の著作権が切れているとしても、それをそのまま活用するのは忍びない。作家魂が、泣く。

謎解きクロスもパズル小説も、ただの言葉ではあるものの、その背景には『まだ誰も生み出したことのない作品を創造する』という大志がある。

私も江戸川乱歩先生を尊敬し、を感じてはいるが、ただの隠し芸で終わりにするわけにはいくまい。これは人としての品(ひん)格の問題だ。

たとえば遠い外国、孤立するに10名の仲間が集められる。

そこで謎の図画に書かれた暗号の通りに、次々と殺人が……。

登場人物が、それぞれ知恵を出し合って実業家美人お供を守ろうとするストーリー。殺されるときに何か合図をしている死体。

晩餐のシメに食べたもやしソバも、きっと何か意味があるのだ。ただ、いくら秀逸なミステリーを書いても、その根本的な謎解きのコンテキストが、あの作品に似ていたらアウトだろう。アガサ・クリスティの作品と設定が似ている。

それはのすること。モノマネであり、これでは日本国内で通用しても、外貨を稼ぐことはできない。

檸檬という短編で、梶井基次郎は富士山の形ではなく重さを語った。作り物の模型などにはない大自然の重さ。

暖をとる火鉢は、で包めば持ち運びができる品(しな)だが、冨士山は動かない。運べない。その重さを感じたいという梶井基次郎。

そこで登場するのが、怪人二十面相ではない真逆のキャラクター。それを私は快人五面相と呼ぶことにする。彼の好きな音楽はジャズではなく演歌だ。

事件を起こしては、ゴメン、ゴメンと謝る、気が弱いスーパースター。それがパズル小説の主人公なのである。

2019年3月2日

この短歌の作者は誰?<3>

■江戸川乱歩は、天才である

昭和30年代の暮らしでは白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫という家電3品目が三種の神器と呼ばれ、日本は高度成長に突き進んだ。

住めばという。都市はスモッグでつらかったが、クルマ・クーラー・カラーテレビが新・三種の神器となり、私たちは一億総白痴時代を迎える。正月に遊ぶカルタで、『さ』は三種の神器だった。たぶん。

さて、江戸川乱歩の小説が書かれたのは100年前という過去だが、怪人二十面相がテレビや映画で活躍したのは、そんな時代である。

あのころを知っている人なら、誰でもを澄ませば聞こえてくる。

ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団~モノクロのテレビ画面で、の中から突如として現れる怪人二十面相。

怪人を追うのは、名探偵の明智小五郎。彼は、事件を解決すると片目をつむってウィンクをする。いぶし銀のイケメンである。

大粒のダイヤモンドで細工をした王冠は、二十面相の福の神だ。王冠の在り処は、知らぬ間に、怪人二十面相の知るところとなる。

怪人は、変装の名人なので誰が味方かわからない。雄弁な人も寡黙な人も、みんな怪しい。廊下を、がすりで忍び寄ってくる。

そして王冠を盗むと、これまで着ていた衣服を脱ぎ捨て、山登りが得意なのだろう、窓から屋根に乗り、屋敷を出て、庭に打ち込んだ、を倒し、花壇の中をまっしぐらに駆け、を立てて塀を乗り越え小路に入る。

ここまで一分もかからない。まさにの仕業だ。

怪人二十面相の住む屋敷の居間には地下にある隠れ部屋へ降りる階段がある。謎めいた姿は超イケメンで、誘拐された大金持ちの御令嬢もめまいがするほどだ。そして一瞬でに落ちる。

2019年3月2日

この短歌の作者は誰?<2>

■江戸川乱歩の『怪人二十面相』

子どものころ、といっても昭和30年代後半のことだが、我が家にもモノクロのテレビがあった。いくつかの番組を強烈に記憶している。

の光を浴びて登場する月光仮面は、『どこの誰だかしらないけれど誰もがみんな知っている』なのだが、二十面相は、誰にでも変身するので、どこにいるのか、わからない。

何となく怪しい空気を持つ人物がいるだけである。

怪人二十面相は、無敵だ。いつも、騙されて恥をかくのは警察側。そこに登場する名探偵の明智小五郎、同じの仲間で少年探偵団をつくっている小林少年は、気長見張りをする役が似合っていた。

子どもなのに、とても我慢強い。

その二十面相は、盗賊だけれど、人殺しはしない。の延べ棒や宝石、名画などを盗む。あらかじめ盗みに入る地区やお屋敷を指定するので、財宝の所有者はを高くして眠れない。

そんな怪人二十面相の私生活は謎だが、優しい男で、ベランダでは葉肉植物を育て、死んだ恋人のためにを育てている。

好きな食べ物は焼肉。ラムキムチが大好きらしいが、辛いものばかり食べていて味覚は大丈夫なのだろうか。

明智小五郎に追い詰められた思いがけない人物は、突如として顔が破裂するかのように歪み、内側から気迫にあふれた怪人二十面相の真の顔が現れる……と思ったら、その顔は明智小五郎だったりする。

怪人二十面相が鼻をかむと、なんだか人生の重みが感じられる。

怪人は、たとえつかまってに収監されても、いつの間にか脱出している。彼に、不可能はない。

そんな怪人二十面相の物語のが、いよいよ開くことになる。

2019年3月2日

この短歌の作者は誰<1>

パズル小説の展開。今回の作品は、謎解きクロス7×7を使っています。

連続5回です。1作ずつ、ご紹介しましょう。

■パズル小説事始

ご存知のように、小説のような著作物には骨身を削って創作したご褒美に、

著作権が定められている。

あまり意識したことはないが、その権利には保護する期間が定められている。小説の場合、100年という決まりだ。

逆にいうと、どんな名作でも、好評されてから100年が経てば、著作フリーとなる。

まあ、法律のスキマないし谷間にあたり、それまではがかかっているように活用できなかった名作も、復刻することが期待される。

作家のファンにとって、100年を経てドアが開いて明かりがともることを、祈りを込めて、待っているのである。

著作権フリーになると、その作品そのものの復刻とともに、そこから派生する新しい創作物も「真似した」といわれることなく、堂々と利用することもアリなのである。

もともと、物書き、作家という人種は内気な人が多く、ビールを頼んだら自動的に柿の種が出され、お通しとして300円がつけられていても、何かのミスで3000円となっていても、文句が言えないタイプである。

スーパーのチラシに誘われて弁当を買いに出ても、いろいろバラエティのあるなかから、結局幕の内を買ってしまう。

仕事がなくなり、長期療養を余儀なくされて旅にでるなら温泉かインドになる。ニューヨークや北欧などにある国は寒いという理由だけで選ばない。短期休暇は、近くの空地で、のようにのんびり過ごす。

パソコンのみならず、あらゆる機器の操作が苦手で、誰か助けてくれなければ、うっかりの中に飛び込んでしまうことだろう。

パズル小説は、そんな作家の、たわごとから始まった。

2019年3月2日

パズル小説「怪人二十面相」第1話 鉄のワナ

■1■鉄のワナ

麻布の、とあるやしき町に、百メートル四方もあるような大邸があります。

四メートルぐらいもありそうな、高いコンクリート塀が、ズーッと、目もはるかに続いています。いかめしい鉄の扉の門を入ると、大きなソテツがドッカリと植わっていて、その繁った葉の向こうに、立派な玄関が見えています。

いく間ともしれぬ、広い日本建てと、黄色い化粧れんがをはりつめた、二階建ての大きな洋館とが、かぎの手にならんでいて、その裏には、公園のように、広くて美しいお庭があるのです。

これは、実業界の大立者、羽柴壮太郎氏の邸宅です。羽柴家には、今、非常な喜びと、非常な恐怖とが、織り混ざるようにして、襲いかかっていました。

喜びというのは、今から十年以前に家出をした、長男の壮一君が、南洋ボルネオ島から、お父さまにお詫びをするために、日本へ帰ってくることでした。

壮一君は生来(せいらい)の冒険児で、中学校を卒業すると、学友とふたりで、南洋の新天地に渡航し、何か壮快な事業を興したいと願ったのですが、父の壮太郎氏は、頑としてそれを許さなかったので、とうとう、無断で家を飛び出し、小さな帆船(はんせん)に便乗して、南洋に渡ったのでした。

それから十年間、壮一君からはまったくなんの便りもなく、行方さえわからなかったのですが、つい三ヵ月ほどまえ、突然、ボルネオ島のサンダカンから手紙を寄越して、やっと一人前の男になったから、お父さまにお詫びに帰りたい、といってきたのです。

壮一君は現在では、サンダカン付近に大きなゴム植林を営んでいて、手紙には、そのゴム林の写真と、壮一君の最近の写真とが、同封してありました。もう三十歳です。鼻下(びか)に気取ったヒゲをはやして、立派な大人になっていました。

お父さまも、お母さまも、妹の早苗さんも、まだ小学生の弟の壮二君も、大喜びでした。下関で船を下りて、飛行機で帰ってくるというので、その日が待ちどおしくて仕方がありません。

さて一方、羽柴家を襲った、非常な恐怖といいますのは、他ならぬ「二十面相」の恐ろしい予告状です。予告状の文面は、

 

「余がいかなる人物であるかは、貴下も新聞紙上にてご承知であろう。

貴下は、かつてロマノフ王家の宝冠を飾りし大ダイヤモンド六個を、貴家の家宝として、珍蔵(ちんぞう)せられると確聞(かくぶん)する。

余はこのたび、右六個のダイヤモンドを、貴下より無償にて譲り受ける決心をした。近日中にちょうだいに参上するつもりである。

正確な日時はおってご通知する。ずいぶんご用心なさるがよかろう」

 

というので、終わりに「二十面相」と署名してありました。

そのダイヤモンドというのは、ロシアの帝政没落ののち、ある白系ロシア人が、旧ロマノフ家の宝冠を手に入れて、飾りの宝石だけを取り外し、それを、中国商人に売り渡したのが、まわりまわって、日本の羽柴氏に買い取られたものであり、(あたい)にして二百万円という、貴重な宝物でした。

その六個の宝石は、現に、壮太郎氏の書斎の金庫の中に収まっているのですが、怪盗はその在り処まで、ちゃんと知りぬいているような文面です。

その予告状を受け取ると、主人の壮太郎氏は、さすがに顔色も変えませんでしたが、夫人を始め、お嬢さんも、召使いなどまでが震えあがってしまいました。

ことに羽柴家の支配人の近藤老人は、主家の一大事とばかりに、騒ぎ立てて、警察へ出頭して、保護を願うやら、新しく、猛犬を買い入れるやら、あらゆる手段をめぐらして、賊の襲来に備えました。

羽柴家の近所は、お巡りさんの一家が住んでおりましたが、近藤支配人は、そのお巡りさんに頼んで、非番の友だちを交代に呼んでもらい、いつも邸内には、二―三人のお巡りさんが、頑張っていてくれるように計らいました。

そのうえ壮太郎氏の秘書が三人おります。お巡りさんと、秘書と、猛犬と、この厳重な防備の中へ、いくら「二十面相」の怪賊にもせよ、忍び込むなんて、思いもよらぬことでしょう。

それにしても、待たれるのは、長男壮一君の帰宅でした。徒手空拳(としゅくうけん)、南洋の島へ押し渡って、今日の成功を納めたほどの快男児ですから、この人さえ帰ってくれたら、家内のものは、どんなに心丈夫だかしれません。

さて、その壮一君が、羽田空港へつくという日の早朝のことです。

あかあかと秋の朝日がさしている、羽柴家の土蔵の中から、ひとりの少年が、姿を現しました。小学生の壮二君です。

まだ朝食の用意もできない早朝ですから、邸内はひっそりと静まりかえっていました。早起きのスズメだけが、威勢よく、の枝や、土蔵の屋根でさえずっています。

その早朝、壮二君がのタオルの寝間着姿で、しかも両手には、何か恐ろし気な、鉄製の器械のようなものを抱いて、土蔵の石段を庭へ降りてきたのです。いったい、どうしたというのでしょう。驚いたのはスズメばかりではありません。

壮二君は夕べ、恐ろしい夢をみました。「二十面相」の賊が、どこからか洋館の二階の書斎へ忍び入り、名画や宝石を奪い去った夢です。

賊は、お父さまの居間に掛けてあるおの面のように、不気味に青ざめた、なんの意識も感じられない、無表情な顔をしていました。そいつが、宝物を盗むと、いきなり二階の窓を開いて、真っ暗な庭へ飛び降りたのです。

「ワッ」といって目がさめると、それは幸いにも夢でした。しかし、なんだか夢と同じことが起こりそうな気がして仕方がありません。

「二十面相のやつは、きっと、あの窓から、飛び降りるに違いない。そして、庭を横切って逃げるにちがいない」

壮二君は、そんなふうに信じ込んでしまいました。

「あの窓の下には花壇がある。花壇が踏み荒らされるだろうなあ」

そこまで空想したとき、壮二君の頭に、ヒョイと奇妙な考えが浮かびました。

「ウン、そうだ。こいつはいい。あの花壇の中へワナをしかけておいてやろう。もし、ぼくの思っている通りのことが起こるとしたら、賊は、あの花壇をよこぎるにちがいない。そこに、ワナをしかけておけば、賊のやつ、うまく掛かるかもしれないぞ」

壮二君が思い付いたワナというのは、去年でしたか、お父さまのお友だちで、山林を経営している人が、鉄のワナを作らせたいといって、アメリカ製の見本を持ってきたことがあって、それがそのまま土蔵にしまってあるのを、よく覚えていたからです。それを、うまく利用できないか。

壮二君は、その思い付きに夢中になってしまいました。広い庭の中に、一つぐらいワナを仕掛けておいたところで、はたして賊がそれに掛かるかどうか、疑わしい話ですが、そんなことを考える余裕はありません。なにかのノイズのように、一度、気になりだしたら鳴りおわるまでとまりません。

ただもう、無性にワナを仕掛けてみたくなったのです。そこで、いつにない早起きをして、ソッと土蔵に忍び込んで、大きな鉄の道具を、エッチラオッチラ持ちだしたというわけなのです。

壮二君は、いつか一度経験した、ネズミとりを掛けたときの、なんだかワクワクするような、愉快な気持を思い出しました。しかし、今度は、相手がネズミではなくて人間なのです。しかも「二十面相」という希代の盗賊です。ワクワクする気持は、ネズミを始末した場合の、十倍も二十倍も大きいものでした。

鉄ワナを花壇の真ん中まで運ぶと、大きなノコギリメのついた二つの枠を、力いっぱいグッと開いて、一度テストをしてズレをただし、うまく据え付けたうえ、ワナと見えないように、そのへんの枯れ草を集めて、覆い隠しました。

もし賊がこの中へ足を踏み入れたら、ネズミとりと同じ具合に、たちまちパチンと両方のノコギリメが合わさって、まるでまっ黒な、でっかい猛獣の歯のように、の足くびに、食い入ってしまうのです。家の人がワナにかかっては大変ですが、花壇の真ん中ですから、賊でもなければ、滅多にそんなところへ踏み込む者はありません。

「これでよし。でも、うまくいくかしら。万一、賊がこいつに足くびを挟まれて動けなくなったら、さぞ愉快だろうな。どうかうまくいってくれますように」

壮二君は、神さまにお祈りするような恰好をして、それから、ニヤニヤ笑いながらツメを噛み、家の中へ入っていきました。実に子どもらしい思いつきでした。しかし少年の直感というものは、けっしてばかにできません。壮二君のしかけたワナが、後にいたって、どんな重大な役目を果たすことになるか、読者諸君は、このワナのことを、よく記憶しておいていただきたいのです。

2019年2月3日

パズル小説「怪人二十面相」はしがき

パズル小説 怪人二十面相 謎解きクロス®

■パズル小説は、言葉のジグゾーパズル『謎解きクロス』を使って展開する短編小説です。パズル小説の「ゴシック体」に注目し、言葉の破片を解答欄に埋めていきます。ABCDEの文字を並べると解答になります。

■このパズル小説は江戸川乱歩作「怪人二十面相」を元にパズル化しました。

■はしがき■

そのころ、東京中の街という街、家という家では、ふたり以上の家族が顔をあわせさえすれば、まるでお天気の挨拶でもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。

「二十面相」というのは、毎日毎日、新聞記事をにぎわしている、ふしぎな盗賊のあだ名です。その賊は二十のまったく違った顔を持っているといわれていました。つまり、変装が、とびきり上手なのです。

どんなに明るい場所で、どんなに近よってながめても、少しも変装とはわからない、まるで違った人に見えるのだそうです。老人にも未成年の若者にも、富豪にも貧乏人にも、学者にも無頼漢にも、男性から女性まで、まったくその人になりきってしまうことができるといいます。

では、その賊のほんとうの年はいくつで、どんな顔をしているのかというと、それは、誰ひとり見たことがありません。二十種もの顔を持っているけれど、そのうちの、どれがほんとうの顔なのだか、だれも知らない。いや、賊自身でも、本当の顔を忘れてしまっているのかもしれません。

それほど、たえず変化をしている顔、違った姿で、人の前にあらわれるのです。いや、そんな安易世界だけではなく、二十面相がメスシカになったと聞いても、違和感はありません。

そういう変装の天才みたいな賊ですから、警察でも困ってしまいました。いったい、どの顔を目あてに捜索したらいいのか、どんな見た目なのか、まるで見当がつかないからです。もちろん賊の住処(すみか)も東京なのか、大阪なのか、あるいは日本ではなく海外なのかも、わかりません。

ただ、せめてもの幸せは、この盗賊は、宝石だとか、美術品だとか、美しくて珍しくて、とても価値のある品物にを感じ、それを盗むばかりで金貨なら盗むけれど現金には、興味を持たないようなのです。それに、よく聞くような賊たちと違って、人を傷つけたり殺したりする、残酷なふるまいは、一度もしたことがありません。きっと血が嫌いなのです。

しかし、いくら血が嫌いだからといって、悪いことをするやつのことですから、自分の身が危ないとなれば、それを逃れるためには何をするかわかったものではありません。盗みに入ったら手ぶらで帰るわけにはいかない意地もあるでしょうから、東京中の人が「二十面相」の噂ばかりしているというのも、実は、怖くてしかたがないからです。

ことに、日本にいくつという貴重な品物を持っている老舗の宝石店の店主や富豪などは震えあがっていました。今までの様子で見ますと、いくら味方の探偵や警察へ頼んでも、防ぎようのない、おそろしい賊なのですから。

 

この「二十面相」には、一つの妙なクセがありました。何かこれという貴重な品物を狙いますと、かならず前もって、いついく日にはそれを奪いに参上するという時間を指定した予告状を送ることです。賊ながらも、不公平な戦いはしたくないと心がけているのかもしれません。しかも決めた日時は、遅延したことがありません。いくら用心しても、ちゃんと取ってみせるぞ、おれの腕まえは、こんなものだと誇りたいのかもしれません。へら、へら、笑っているのかもしれません。いずれにしても大胆不敵、傍若無人の怪盗といわねばなりません。

このお話は、そういう出没自在、神変(しんぺん)不可思議の怪賊と、日本一の名探偵・明智小五郎との力と力、知恵と知恵、火花をちらす、一騎うち、に横にとびうつる大活劇であり、大闘争の物語です。

大探偵・明智小五郎には、小林芳雄という少年助手があります。この可愛らしい小探偵の、リスのように敏捷な活動も、なかなかの見ものでありましょう。

さて、前おきはこのくらいにして、いよいよ物語にうつることにします。

■特別ヒント「未成年:ヨコ」「無頼漢:タテ」■

2019年2月1日