この秋、大吉くじプロジェクトでは、大吉くじを3000札ほど制作することになります。けっこうな数です。
100部の制作に5時間として、150時間。一日6時間が限度なので、25日かかります。まあ、午後から夜にかけて、コツコツと続けることになります。でも、嫌いじゃないんです。
なんか、自分が「職人」になった気分。そして、いろいろなことを考えながら、一つひとつ、「この大吉くじを引いて、だれかが 、ちょっとでも幸せになってくれたらいいな」とか。
「ひょっとしたら人生の大切なコンセプトを感じる人もいるかもしれない」「誰かの心を、いやすかもしれない」と想像しながら、ひたすら、折り続けるのです。
この「どこかで誰かの役に立つ」という想像力こそ、創作の原動力。とはいえ、実際に「役立ったよ」と言われると、それまでの苦労がふっとんでしまいます。
私には、現在30名ほどの大切なサポーターがいるのですが、そのうちの一人から「ハガキ絵が届いた。この海の青色が好き。早速、部屋に飾ります」とのこと。
まじ、涙。うれしくて。たった一人でも、自分の作品を認めてくれて、しかも飾ってくれるサポーターがいることは、本当に、心を支えてくれるのです。
きっとどこかに、まだ、心なごませてくれる、まだ見ぬ友人、サポーターがいると思うだけで、創作意欲がわいてきます。
で、彼は今、具象画よりも抽象画に惹かれるとのこと。はっとしました。私は、結局、ハガキ絵で抽象画を描いているのだということです。
私には、幸いなことにピカソやルオー、スーチーヌ、マティス、セザンヌ、佐伯祐三、荻須高徳、ふれねーやスティールなどの画家の絵を感じとる感性が備わっています。
ならば、ハガキ絵なら、自分でも描けるのかもしれない。そう思えてきたのです。はい。できない。わかるということは、描けるということです。はい。
高校生のとき、池袋の東武百貨店で開催されて展示即売会に、ルオーの水彩画、ハガキ大の水彩画がありました。裸婦を描いたもので「5,000」と値札がありました。
私は、すぐに自宅に戻って5000円をかき集め、東武百貨店に行きました。そしてスタッフに「これをください」といったのですが、「え 君には無理でしょう」と。
500万円だったのですね。単位が1000円。意気消沈した高校生は、そのときに誓いました。将来、ハガキ大の作品を描いて5000円で売れる人間になるぞ、と。
それが、半世紀たって実現しようとしています。感無量です。どこかで、私の作品に共感し、5000円を払って自宅に持ち帰る人がいる、私は、そう信じています。
だって半世紀前の私が、そうだったのですから。