深谷宿ミステリーツアー2018問題公開

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2003年にスタートし、深谷商工会議所の村岡さんが推進してきた深谷色ミステリーツアーは、ミステリー作家の伊井圭さんから私が引き継ぎ、19回目を迎えました。

今後も、深谷では「FMふっかちゃん」を活用しながら、七つ梅の敷地内で行われる予定です。

その問題、ご紹介しましょう。

それは2003年のこと。深谷商工会議所に勤めている【村岡豊】さんは、商店街の活性化について、頭を悩ましていた。

「ぼくのライフワークは、えんむすび。縁といっても結婚だけじゃないよ。人と人とのよき出逢いを深谷でつくり、街を活性化していきたい」

その年、彼が深谷在住のミステリー作家【伊井圭】さんに託したミステリーでは登場人物が誰も死なない。もちろん国家の秘密を暴くスパイも出てこない。そこに登場するのは素顔のまま生きる、市井の人々である。

ハードボイルドの主人公のようにタフでが強いわけでもなく、皮肉が得意でもない。どちらかといえば素直な性格であり義理堅い一面もある。

それゆえ仕事のコツは覚えても、出世は無関心にふるまってしまう。だから、ちっとも偉くない。伊井さんが生きていたら、こう語ったかもしれない。

「ぼくのライフワークは、まちあるき。深谷の街は、魅力でみちている。引っ越したくなかったけど、寿命には逆らえない」

彼が深谷の街の活性化のために書き下ろしたミステリーの登場人物は、現場で這いずり回ってミスをしてシラを切る前に落ち込んでいる。

たとえば椅子に座って動かないのように冷たい上司からカスのように扱われても、黙して従ってしまう。心にがあるから叱ると、これまで研修などでコーチに教わってきたセリフをくりかえす。とても我慢強い性格なのだ。

小市民としては、四角い関係ではなく丸味のある関係が理想だ。ジャンケンですら相子になるとホっとする。どっちが勝っても傷つくのが勝負事だから。

ふかやにぎわい放送倶楽部の理事長をしている【伊藤眞治】さんも、地域についての思い入れが強い。

「ぼくのライフワークは、まちおこし。好きな音楽を通して、大好きな深谷の街の、にぎわいを演出できたら最高です」

ミステリーウォークは、散歩が好きな人たちがターゲット。たとえば春先に花粉症になっても、市民はマスクをして散歩をする。

散歩は、気ままな一人旅に似て、思いがけない発見もある。

先日、とある古寺の境内で与謝野晶子の句碑を見つけた。高さ2メートル、縦に長い楕円の石には、こんな短歌が刻まれていた。

『柔肌の 熱き血汐に 触れも見で 寂しからずや 道を説く君』

生きることへのパッション(情熱)を感じ、胸が熱くなった。そしてミステリーウォークのミッション(使命)を思った。

映画を通して文化を伝える深谷シネマの館長をしている【竹石研二】さんは、もちろん、ただの呑兵衛ではない。

「ぼくのライフワークは、こんにちは。深谷シネマで一緒に映画を観た人が、通りで会ったら、挨拶を交わす。そんな街って、ステキだろ?」

その真意を伝えるのは難しい。ミステリーウォークは金貨ではない。いぶし銀の輝きを持つ銀貨だといえば伝わるだろうか。

そういえば、エレファントカシマシの【宮本浩次】さんも語っている。

「オレのライフワークは、ずれること。世間が何といおうと、オレはズレてるほうがいい。ドーンと、笑顔の明日に向かおうぜ! ベイビィ」

2003年に始まった深谷宿ミステリーツアーも、15周年を迎えた。伊井圭さんも、七ツ梅酒造跡に里帰りして、大酒を飲んで笑っていることだろう。