GWの迷走

謎解きクロスのファンのみなさん、GWはいかがお過ごしですか。

福島県の新甲子温泉にある甲子高原フジヤホテルにて、地域活性の達人たちで、ホテル再生事業のコンセプトづくりをするワークショップに参加させていただきました。

とっても楽しく、興味深いワークショップ。ここから、新生フジヤホテルの新しい歴史がスタートする、そんな思いを強くした二日間でした。プロデュースしてくれた東急電鉄のTさん、そして宿泊させてくれたオーナーに感謝いたします。

で、例のごとく、そこでも私は「謎解きクロス」のトップ営業マンとして、みなさんに紹介させていただきました。

そして、約20名のプロのみなさんに、ちょっとした余興として、2016年秋に行われた「信州上田 謎解きウォーク」と同じ問題とヒントを、甲子高原フジヤホテルのロビースペースで展開させてもらったのです。

ありがとうございました!

その結果を少し書きます。

地域活性化を進めている現役プロデューサーのみなさんのうち、関心を示してくれた人が10名。ただ、実際に謎解きまでしてくれた人が3名。その内訳は、建築家と漫画家は女性、一人は著名なビジネス作家の男性です。

ご参加、ありがとうございました。

その他の人は、目の前に広がっている謎解きの空間よりも、今いる素晴らしい環境と、素晴らしい人たちとの会話と、これから打ち出す新生フジヤホテルのコンセプト開発に夢中で、謎解きをする人はいませんでした。

ちょっと残念でもあり、まあ、そうだろうなぁという気持ちもありました。

で、ちょっと迷走してみました。

謎解きをしてみたい、パズルを解いてみたいという欲求は、私にとっては「当たり前」のものなんですが、地域をよくしたいという思いにあふれたみなさんの2割程度しか、関心はなかった。この数字をどうみるかで、今後の展開がきまってきます。

この数字は、たぶん、一般的な数字なんだと思います。

謎解きクロスという世界は、面白い、興味がある人には深く入り込めますが、そうでない人にとっては「なにそれ」の世界なのでしょう。

例えば昨年、10000②の人が街歩きのミステリーウォークを楽しんでくれました。私は、ミステリーウォークに参加されたみなさんの後ろをついていき、みなさんが謎解きクロスを見て楽しんでいる状況に感動していたわけですが、その人々は、そもそも謎解きに興味がある人だったんですね。

一般のみなさんは、ミステリーにもクロスワードパズルにも、謎解きにも興味はないのです。そのことを前提に、マーケティングを考えたほうがいいのですね。

謎解きクロスは、特別な人たちが楽しむゲームなんです。

ですから、これはひろくマスとしてPRしても、ひっかかりは少ない。特別なターゲットが集まる場に、PRすべきなんです。そして、2割という数字は、かなり高いのです。きっと。

かつて、有栖川有栖さんが、こう言ってました。

「ミステリー小説を書くときに、本を読む人のうち、9割が面白いといってくれる内容ではなく、9割が関心を示さなくても、1割がものすごく興味をもってくれる内容にしたい」

私の勧めている謎解きクロスも、同じような気がしています。

本を読まない人に、謎解きクロスの魅力を伝え、ミステリー小説を手渡しても、それはスル―してしまうだけ。本を読み、なかでもミステリーが好きで、その理由がホラー的な要素ではなく「謎解き」にあるというみなさんが、ターゲットなのです。

そんな迷走のなかで、ホテルですすめる謎解きクロス。ちょっと考えています。オペレーションが大変なのですね。オペレーションが必要ない、ミステリーウォークができるといいのです。

まず、問題は「無人のスペース」に置いてあるだけ。ヒントは、ホテルの中に何ヶ所か「謎解きクロス」が掲示されている。ただ、それだけでは解けません。その他に、何ヶ所か「謎解きクロス」ではない「言葉」が、現地に行くとわかるしかけ。

それを組み合わせて問題にすれば、ホテルに戻って、「謎解きクロス」と「現場の言葉」のミックスで謎解きが自動的にできるという仕掛け。

そんなことを考える、いい環境の新甲子温泉。これから、通うことになりそうです。

 

 

GWの妄想

みなさん、2017年のGW、何をして過ごしていますか?

私は、謎解きクロスに関していえば、まず、深谷宿ミステリーツアーの原稿作成。

また、GW後の準備として「インパウンド対応の強化」と「小田原近辺で展開するミステリーウォークの企画検討」をします。その他、テーマとしては「5月13日に沖縄で開かれる謎解き酒場の企画検討」があります。

そして、これは別件なのですが、せっかくのGWですので、ここ数年、考え続けてきた課題「AI(愛)はAI(人口知能)を、どのように超えていくか」というテーマについて、そのコンセプトデザインを作りたいと思っています。

で、今朝、感じたことを書きたくて、ここにいます。私たち物書きは、夜中、寝ている間に、たくさんの啓示のようなものを得て、朝は、それを書き起こす作業に追われます。もちろん、啓示のようなもので、ちゃんと覚えているものは少ないのですが、こうして書いているうちに、想い出すこともあります。

昨夜の夢のなかで私は、「このことを、まだ誰も知らない」という事実を楽しんでいました。「このこと」とは、おそらく「謎解きクロスを使ってミステリーがデファクトになる」ことなんです。

ちょっとイメージしてみてください。

2020年には、謎解きクロスを使った地域活性化のイベントが、全国で100ヶ所以上、行われています。謎解きカフェの展開、沖縄でする予定の「謎解き酒場」のような謎解きクロス普及型のイベントが、毎月、あるいは隔週で提供される「同一問題」によって、全国100ヶ所で配布されることになります。

東京だけではありません。

北は北海道から、南は沖縄まで、たぶん10くらいの都道府県で、100ヶ所。

そのとき、私は「遅れてきた作家」として、マスコミにも登壇しています。もちろん、2018年に刊行した「謎解きクロス入門」はベストセラー。その収益を、おしみなく地域活性化に使いますので、全国に「謎解きクロスによる地域活性化」を進める人材、すなわち地域プロデューサーが、どんどん登場してきます。

私は、地域プロデューサーのみなさんに会いに、毎週の週末、順番に、全国を渡り歩きます。それが私の理想の展開。そのとき、地域で会った人が、私をみて気づくのです。

「あれ? 一緒に仕事したことがある!」

「あれ? 本で読んだことがある」

「あれ? 講演を聴いたことがある」

そうなんです。私が週末作家として地域活性化を唱え始めてからでも、すでに10年。その間、けっこう、いろいろな方と会い、週末作家として「謎解きクロスによるミステリーウォーク」を推奨してきました。

そして、気持ちが伝わり、実際に行動してくださった方も、たくさんおられます。それゆえ、本サイトが生まれ、今年は謎解きクロスが急ピッチで進み、新たなステージを迎えることになるのです。

ただ、現実問題として、この「謎解きクロス」が、どの程度凄いのか、ほとんどのみなさんが、うまくイメージできませんでした。

せっかく、会って、プレゼンさせていただいたにもかかわらず、謎解きクロスによるミステリーウォークや、私の書いた「誰も死なないミステリー」に注目してくれる人は、ごく少数だったのです。

そのうちの一人は、あの本格ミステリー小説の大家・有栖川有栖さんです。まだお仕事ではコラボできていませんが、2020年には、一緒に楽しいイベントを企画展開していると思います。あのハードボイルドの大沢在昌さんも「これは面白い」と、日本推理作家協会の事務方の女性を紹介してくれました。

ただ、そのような、ごく少数の、凄い人々(もちろん、あの有名な首長も!)が、ほんに3分で「これは面白い」と言ってくださるのに対して、ふつうの、常識的な地域プロデューサーの人は、なかなか「いいじゃん」となりません。

まあ、これまで世の中になかった新しいコンセプトですから、そのような反応は、いつものことなんですが。ただ残念なことに、その想像力のなさが、謎解きクロスによるミステリーウォークの普及を、とっても、とっても遅いものとしていました。

私はもう、8年間も、週末の時間のすべてを費やし、謎解きクロスによるミステリーウォークをアピールしてきたのです。

でも、行動してくれた地域プロデューサーは、だいたい10人ほどにとどまっています。それはなぜか。判断するモノサシを「量」におき、「マスコミ」においていたからだと、私は感じています。

この謎解きクロスは、普及が始まれば、あっという間に全国区でヒットします。

そのとき「あ、この人知ってる」といわれても、私は、ちょっと対応できません。

ですから、今のうちに、100万人の謎解きクロスになる前に、謎解きクロスが普及していくプロセスを、ぜひ、一緒に楽しみ、見守ってください。

なんてこと、ちょっと考えたGWでした。

向かって右の女性は、目黒区でミステリーウォークの参加して「謎解きクロス」のファンになってくださり、2年連続で、しかも多地域、謎解きクロスを楽しんでくださっています。ちなみに、向かって左側の女性は、お姉さん。二人で、のんびり散歩して、街を楽しみ、そして「ミステリー小冊子」を解き、感動してくださったとのこと。

今年、私の小冊子が目黒区で読めるのか、オファーがないので未定なんですが(すみません。週末作家は、オファーと情熱がなければ、決して原稿を書きださないのです)、いずれ「本」として、広く入手できるようになるので、そのときにはまた、おおいに楽しんでいただけると思います。

深谷宿ミステリーツアーの小冊子が凄い!

謎解きファンのみなさん、お元気ですか?

本日は、大好きな深谷に伺い、1ヶ月後に行われる「深谷宿ミステリーツアー2017」の原稿作成のため、「若女将」の8人にお会いし、写真撮影と「30秒で語るヒント」の収録をしてきました。

そこで、最高にうれしい出来事があり、自信を深めるとともに「感謝の気持ち」でいっぱいになりました。そのことを記しておきます。

地域活性化でミステリーウォークを進める場合、謎解きクロスの5×5は無償で提供できますが、原稿作成に関しては、お金をいただきます。ただ、というわけにはいかないのです。

そのお金がかかるということに関して、地域の「管理職」のみなさんから「費用対効果がない」との批判があります。びっくりするほどの廉価なんですが、お金を払うというときには「それで、何人来たんだ?」「売上は伸びたのか?」などという質問がとびかうようです。そのようなモノサシを当てて判断される土俵にのるつもりはありませんので、そんなときは、即刻、撤退するのですが。

で、深谷宿ミステリーツアーのことに戻ります。

このイベントは、2003年から行われています。渋沢栄一氏を生んだ深谷の商工会議所さんが主催してくれるので、持続できたのです。私は、創始者のミステリー作家伊井圭さんの後をうけて、2017年で3回目となる小冊子の発刊に挑んでいるわけです。

その内容は、初級編として、地域の17ヶ所のヒントポイントを歩き、そこに掲示してあるヒントから、17文字の解答を導くものです。これは、時間を競うわけではないので、小学生から高齢者まで、ベビーカーを押したファミリー、カップル、もちろん単独参加もOKという、幅広い参加者が楽しめるイベントです。

そして、ゴールしたらミステリー小冊子がもらえます。これは、ミステリーなのに誰もしなない、でも本格的な謎解きが楽しめる新感覚ミステリー。今回、私が連休前に深谷におじゃましたのは、この小冊子の原稿作成のためでした。

その作成過程を、ご紹介しましょう。

商工会議所さんとは、すでに3回の企画打ち合わせを済ませています。そこで、今回の容疑者は「若女将」の8人と決まりました。そのなかの一人が、真犯人となるのです。

で、GWの間に原稿執筆をするわけですが、そのためには、一人ひとりの「容疑者」に会って、ご本人のイメージを把握する必要があります。たとえば、案内してくれた若女将は、企画の概略を説明すると、こう語ってくれました。

「え、8人が容疑者のミステリーを、これから書いてくれるんですか。それって、凄いことです。私も書いてくれる? だったら、ぜひ、ラブシーンにしてください」

もちろん冗談なのですが、その後、いろいろお話を伺うと、本気で「ミステリーに反映してもらえる素晴らしさ」に感動してくれていることがわかりました。

そう、そこなんです。

これまで、地域の顔役に、ミステリー小冊子の「容疑者」になっていただきました。それが、地域を起点にした地域活性化のためのミステリーウォークの特長です。

若女将は、続けました。

「だって、自分たちが登場人物になるミステリーでしょう。感激です。本当のオリジナルじゃないですか。夢のよう。ずっと、深谷宿ミステリーツアーに出ることが夢でした。だって、そんなチャンス、めったにないことです」

そうなんです。もし私が赤川次郎や有栖川有栖だったら、これって大変なことでしょう? 自分の名前と、イメージが、深谷の場とともに紹介されるのです。もちろん私は、無名ですから、うれしさは1割程度でしょうが、それでも「希少価値」があることだけは、間違いありません。

希少価値こそ、この何でもコピーが手に入る時代に、貴重なものであるはずです。

で、そうやって書かれたミステリーは、地域の人しか楽しめない、参加者には「つまらないもの」になるのでしょうか。しかも、このミステリーでは「誰も死なない」のですから、ちっとも、もりあがらない?

その課題にチャレンジするために、謎解きクロスが登場したのです。

ふー。今回は、そんなところで。

騎士団長殺しが止まらない

謎解きクロスは、静かに、広まりつつあります。

2017年4月1日、本サイトで、毎週1問、謎解きクロスの新作を発表していこうと思っていましたが、ずっと手を出さずにいて、うっかり読み始めてしまった村上春樹の「騎士団長殺し」が、止まりません。

しかも、一日、数ページしか進まないのです。謎が多すぎて。

というわけで、本当のエイプリールフールになってしまった毎週の新作発表。スタートは、しっかり準備して、たぶん夏休みあたりから。

ご期待ください。

始まりが始まった

2017年4月1日。

学生は新学期、社会人は新年度がスタートします。また今日は、あの有名なエイプリール・フール。ひとつくらい、夢のような話もしてみたくなります。

というわけで、この謎解きクロスのサイトでも、新しいコンテンツがスタートします。それは毎週1回、日曜日に、新しい「謎解きクロス」の問題を発表して、50週、続けるということの、スタートです。

このコンテンツでは「謎解きクロス7×7」のフレームを使います。ですから、文章だけを、提供することになります。そのとき、太字にすることで言葉の「欠片」であることを示します。

詳しくは、また次回に。

コンセプトデザインについて①

人間とは、考える葦である

思想家パスカルが残した言葉。あまりにも有名なので、私も子どもの頃から、その言葉は知っていました。しかし、認知のレベルはといえば「葦は、脚ではなく、弱い存在の象徴」というあたりで、止まっていました。

コンセプトデザインという、アタマの中にある構造体を、外部の人がわかるように「見える化」する仕事についた1990年代以降も、考えるということを、真剣に突き詰めることはありませんでした。

しかし今、私たちは「考えること」を考える時代に入っています。

考えるということは、どんなことなんでしょうか。学習することと、考えることとは別ものです。私たちは、考えるために、学習したり、勉強したり、探求したり、調べたりしています。

考えることそのものが、目的になっているのが、私たち人間かもしれません。

しかし、考えるだけではサルでもできる(?)

サルを差別してしまったかもしれませんが、たぶん、脳がある生物だけではなく、あらゆる生物は、細胞そのものがつらなっている状態で、それが脳でない場所であっても、きっと「考えている」のです。

ただ、コンセプトデザインを研究していた、わかってきたことは、何かを考えても、いくら深く考えても、それが、自分の言葉として、あるいは形状としてイメージできないうちは、誰にも伝えることができない。もちろん、自分にも、伝えることができません。

自分にも、伝えられないということが「もどかしい」のです。

もどかしいけれども、何をすべきかを知っている気がする者の、夢のなかでは、とっくに解決しているはずなのに、いざ、目覚めてみると、何にも実態のある言葉がでてこない。それが、ふつうなのです。ですから、何度も何度も、私たちは考えることを続けます。いつも、考えている。すると、脳が、ちょっとだけ、ご褒美のようなものを提示してくれます。

なぜ、それを思いついたのか。わかりません。

ただ、パっとひらめくのです。そして、そのひらめきを追いかけていくと、そこに何か形になることができています。

それがコンセプトデザイン。

で、なぜ、謎解きクロスのブログで、コンセプトデザインのことについて、ふれようと思ったのかを書いておきます。

謎解きクロスを解く行為。とくに謎解きクロス5×5を解く行為が、コンセプトをデザイン化する動きに、ちょっと似ている気がしているからです。

ということは、実は、謎解きクロスが直観的に「脳トレ」になるとわかっているのですが、それはアタマにうかんだ、もやもやしたものを、一つの言葉を発見することで、つなぐ行為に当たるのでは。

私は、いずれ謎解きクロスを、1000万人の人々が楽しむようになるというドリームを持ち続けているのは、そんな確信からきています。

謎解きクロス開発物語<10>

謎解きクロスは、解くことも楽しいのですが、実は「つくる」喜びも捨てがたいものがあります。それで、今年後半に執筆を予定している「謎解きクロス入門」では、謎解きクロスの解き方だけでなく、つくりかたについても、紙面をさくことになります。

では、どう作るのか。英語版の謎解きクロス5×5の場合をみていきます。

インバウンド対応について、謎解きクロスに何ができるか。3日間、考えました。その結果、「謎解きクロス5×5」は大丈夫だけれど、それより大きくなると、相当英語に習熟していなければ、辞書だけでは作れません。作れないということは、たとえ問題が完成したとしても、今度は「なかなか解けない」という問題が発生します。

せっかく、インパウンド対応の英語バージョンなのに、たとえばアメリカ人でいえば小学生でも、らくらく解けるような問題、ヒントを少しいえば、日本人でも解ける問題が理想のレベル。

ということで、英語の謎解きクロスは「5×5」に限定しました。

では、どうつくるのか。

まず、英文の「解答」が必要になります。そこで、日常英会話の本を仕入れました。また、テーマがインバウンド対応ですから、外国人の観光客が日本に来た時に、気分よく「おもてなし」の心が伝わるような英文を、謎解きクロスで浮き彫りにできれば、楽しいはず。

WELLCOME TO TOKYO

たとえば、こんな感じです。

その1文字ずつが、それぞれ謎解きクロス5×5の「問題」となります。そこで必要な単語は、「すべて5文字」であり、なるべくなら「名詞」であり、かつ、WELLCOMEの最初の文字「W」なら、5文字のど真ん中が「W」になる名詞となります。

そんな言葉、あるのでしょうか。

辞書を順番に見ていく?

大変です。頭の中の英文を調べる?

大変です。

そこで、もう一度、日常英会話の本や外国人観光客の「おもてなし」をするための英会話集をつぶさにチェックし、「5文字の名詞」を書き出します。そして、ど真ん中の文字を「ABC」の純なならべると、謎解きクロス5×5の、英語版辞書ができます。

実は、日本語の場合も、同じように「辞書」が基本。事前に「あいうえお」順に、使えそうな言葉を集めておくのです。

すると、たいていの単語は、そこから引いてくることができます。

これが、謎解きクロス入門で紹介される「つくりかた」になります。

 

インバウンドの謎解き

ひとつ、大きな課題があります。2020年、東京オリンピックの年には、昨年の2倍、4000万人の外国人観光客が、この日本にやってくる。そんな計画が進んでいます。

この4000万人という数が、どれだけ凄いのか。2000万人だって、超えるのが大変でした。その次の目標は3000万人かと思ったら、一気に4000万人。

最初は「無理でしょう」と思いましたが。でも、京都のことを考えてみました。京都には、毎年500万人の外国人観光客がやってきます。その8倍が4000万人。

京都には、年間、5000万人の観光客がやってきます。あ、もう4000万人を超えました。そうです。日本人が4500万人も、京都に来る。だったら、日本には、北海道と九州があり、東北があり、四国がある。これだけで、500万人×4で2000万人。京都が500万人。あと1500万人を、関東で受け入れればいい。

すると、中国地方が調整役として残っているから、年間4000万人は、不可能な数ではないのかもしれません。

ただし、ただ宿泊施設を用意すればいいのか、ということでもないでしょう。民泊は難しいので、廃校となった小学校とか、過疎化している地域の公民館とか。あまりこなくなった旅館とか。空いている場所は、何でも活用し、アルバイトの人材を集めて、宿泊施設に変えていきます。

そうやって、ハードの面は、予算がつけば早急に、整備することができます。で、問題。こころは、置き忘れていませんか?

こころは、どこにあるのですか。そこに謎解きクロスによるミステリーウォークが、役立つのかもしれません。日本に来て、ただ自然を観たり、食事をしたりするのではなく、ちょっと謎解きがあることで、受け身だった観光に、自分の意思が入っていきます。

謎解きクロスの、インパウンド対応。その意味。気持ちの在り方を変えること。受け身の観光って、そもそも、つまらない。でも、うっかりすると、そんな国になってしまいます。

日本を、探検に行こう!

そんな気持ちになれるように、ちょっとした謎解きで、こころのスイッチをオンにする。それが謎解きクロスです。

お、日本は面白い!

それが、謎解きクロスのできること。そこから先は、スイッチが入った外国人観光客のみなさんを、どうやって「おもてなし」するか。それぞれの地域で、それぞれの栃の「良さ」を、素直に出していければいい。スイッチさえ、入っていれば、そこは不思議の国の、楽園になる。

きっと。

謎解きクロス開発物語<9>

謎解きクロスによるミステリーウォークの原点は、1982年秋に行われた「黄金を探せ」という角川春樹氏の企画・運営したビッグイベントにありました。

あの年、何があったのか。

いずれ、小説にするネタなので、肩透かしですみませんが、ここでは書けません。お金になるネタなんです。

私たちは、黄金はゲットできませんでしたが、角川春樹氏から、なかなか入手ができなかった、発酵されたばかりの500円銀貨を10枚、いただきました。口止め料でした。

20年くらい前、九段下のフレンチの店で、角川春樹氏の隣のテーブルで食事をしました。たまたま、なんですが、何番目か忘れましたが、若い奥さんと一緒でした。あれだけ、破天荒な企画を進め、世間を騒がせたのですから、何人もの女性と結婚し、別れ、そしてまた恋をするのも、まあ、いいのでは。薬物中毒も、自己責任ということで、私は、そんなものかなぁと思って、観ていました。

さて、ベルタルべに戻ります。角川氏が「黄金を探せ」を世に出す前年、1981年に、ちょっとした事件がありました。スポーツ新聞に「代々木公園で100万円がみつかる」との記事。暗号を解いたら、100万円が埋めてある場所がわかり、そこに行ったら缶に入った100万円があったというのです。

その翌週、「第二弾」が、同じくスポーツ新聞に出ました。暗号文とイラストと、100万円の争奪戦に参加する方法がでていました。暗号の本を2000円(3000円かも)で購入すれば、発見できる確率が高まるとのこと。

私は、その本を書い、研究しました。そして、東十条の飲み屋に行って、高校時代の友人を呼び出し、チームを組んで宝探しに出たのです。

宝のある場所は、東京とは限りません。関東地方にあるということです。ただ、暗号を解いてみると、「哲学堂に埋まる宝あり」という文章ができました。真夜中に、富士通に勤めている友人を呼び、4人で探索に出ました。30mくらい測れるメジャーと方位磁石、穴を掘るシャベルを持った4人組は、哲学堂のグランド周辺にある照明塔を起点として、掘る位置を決めました。夢中で掘っていると、見回りの警察官が二人、立っていました。

「何をしているんですか?」

「死体を埋めているわけじゃありません。宝物を探しているのです」

「こんなところを、掘ってはダメでしょう」

「確かに。ご説明しましょう」

私は、交番まで同行し、スポーツ新聞や暗号ブックを見せて、

「これは、実際にある街を使ったゲームなんです」

と説明をしました。当時の警察は、けっこう話がわかり、

「それは楽しそうですね。穴を掘ってもいいですが、なるべく元通りに埋め直しておいてください」

朝が来ました。

とうとう、100万円は出てきませんでした。

それから15年後、私は、このゲームの仕掛け人と仕事をすることになります。ビックリしました。

「本を売るためのプロモーションだった」

とのこと。私は、すべてヤラセだと思っていましたが、最初の100万円はヤラセだったけれど、2回目の暗号問題は、

「群馬県の、とある観光地(伊香保)に隠したが、誰も発見できず、回収した」

ということを聞きました。

そんなことがあった後の、「黄金を探せ」だったのです。

謎解きクロス開発物語<8>

謎解きクロスの原点をさかのぼれば、1982年、角川春樹氏が大藪春彦を担ぎ出して謎解きを仕掛けた「黄金を探せ!」にたどり着きます。

たぶん、秋。新500円銀貨が発行されるというタイミングでした。朝日新聞の全面を使って「黄金を探せ!」という告知がなされました。

そこには、暗号が出ています。記憶もうすれているので、ちょっと端折りますが、暗号を解くと「ベルタルべ」となります。このベルタルべは、シンブンシのような「回文」となっていました。

葉書に「ベルタルべ」と書いて角川書店の事務局に送ると、「黄金を探せ」というイベントへの招待状が来ました。ある日曜日、10時に山手線に乗りなさいという指示。

仲間を募って、探索の準備をして乗り込むと、ラジオの周波数が、中刷り広告に記してあります。それに合わせると、ラジオの広告。それをヒントにして、解答を「大井競馬場」と解いた私たち4人は、ちょうど目黒あたりにいたので、品川に出て、京浜東北で大井競馬場駅で降りました。

まだ、50人くらいしか集まっていませんでした。そこで問題を受け取り、都会の街を、地図を読み解き、暗号を読み解いて歩きます。

街歩きをしながら、ヒントポイントにたどり着き、そこでヒントをゲットして、謎解きをして、次に進む。そうです。謎解きクロスによるミステリーウォークと同じ仕掛けを、角川春樹氏のチームが、1982年に、すでに実現していたのです。

まず、大きな暗号文を解き、それから10カ所くらい歩いて、細かい暗号を解きます。すると、新宿にできたばかりのアルタ前に、15時に集まれという解答でした。あとでわかったのですが、大井町競馬場で問題を受け取った人が10万人。そのうち、謎解きをしてアルタ前に集まったのが3万人。もちろん、新宿は東口のみならず、西口も、黄金を求める豆探偵であふれていました。

嫌な予感がしました。たぶん、アルタ前は黒山の人だかり。ヒントは、大きなビジョンから出されるに決まっていますが、それを群衆の中で観ていては、次のリアクションがとれません。きっと。

そこで、ヤマを張りました。理由はわからないけれど、電車に乗ることになるから、なるべく改札口の近くにいたほうが有利です。アルタのビジョンが観られる位置に陣取り、双眼鏡をのぞきながら、15時を待ちました。

と、60秒くらいのCMが流れます。私が目視した内容を、仲間が必死に書き取ります。すぐに謎は解けません。しかし私は「小田急線だ」と気づき、仲間三人に声をかけました。「走るぞ。ついてきて!」

小田急線の急行に飛び乗り、社内で、アルタで提示された暗号を解きました。とある駅で降りると、バスが停まっていました。すでに1台めのバスは、出てしまったとの説明がありました。バスには、ぎゅうぎゅうにつまって、100人くらい乗れるようです。整理券を受け取って、バスに乗りました。たしか、120番くらいだったと思います。

このときも、嫌な予感がしました。私たちは、他の誰よりも早く、小田急線に乗り込んだはずです。しかも、急行でした。私たちよりも早く着く電車はありません。それなのに、すでに100人も、黄金を探せというイベント会場に向かっているというのです。

とっても嫌な予感がしました。

バスが、もう一台、やってきました。ということは、300人で、2000万円の黄金の争奪戦が始まるのです。

イベント会場に行くと、テレビで見知っている、あの角川春樹氏が、待っていました。そこで、報告を受けました。角川氏は、マイクを取って、こんなことを語りました。

「みなさん、おめでとう。今、みなさんがたどり着いた駅には、3万人の参加者が集まって、パニックになっています。彼らには、もう黄金を探す権利がありません。黄金は、100万円を20本用意して、あの竹藪の敷地にかくしてあります。これから、ここに集まってきた300人で、黄金の争奪戦を行ないます。そこで、お願いです。本来、あの竹藪には20本の金の延べ棒が埋まっていましたが、そのうち2本を、今、小田急線の駅に集まってパニックを起こしているみなさんへの、敗者復活戦の賞品として使わせてください。いいですね」

そうしないと、パニックが収まらないのでしょう。私たちは、これから始まる金の延べ棒の争奪戦のことでアタマがいっぱいで、誰も、文句をいうこともなく、次の指示を待ちました。

私の近くにいたグループは、金属探知機を持参していました。金の延べ棒を、その道具で発見しようというのです。角川氏は、こういいました。

「さて、ルールを説明しましょう。竹藪には、整理番号順に、入ってもらいます。すなわち、番号の早いほうが有利です。また、ここには300人が集まっていますが、100人ずつ、制限時間20分で、探してもらいます。それぞれの100人に対して、6本の金の延べ棒が割り振られます。6本、すべて発見されたら、その100人は終了となり、次の100人に、竹藪に入ってもらいます」

やっぱり。金属探知機をもってくるべきだったか、と考えていたときに、角川氏は、こういいました。

「ところで、100万円の金の延べ棒ですが、さすがに、本物を竹藪に隠すわけにはいきません。そこで、同じ大きさ、形の、木でできた棒切れを隠します。それを見つけてください。あとで、金の延べ棒と交換します」

そうです。金属探知機が使えなかったのです。あちこちで、落胆の声。でも、それは、竹藪の中に入っていく、最初の100人の怒号でかきけされました。なぜかしら、黄金を探しに竹藪に入った参加者たちは、「オー!」という叫び声をあげて走りまわっていたのです。

そこで、私が目撃したものは、本当に、驚くべきことでした。

それは、あまりにも凄い出来事だったことが理由かは定かではありませんが、今では、誰も伝承していません。ネットにも、何の痕跡も残っていないのです。

生き証人は、ここにいます。

次回、私が目撃したドラマについて、ご紹介しましょう。